財務分析の指標となる「売上高経常利益率」でただしく収益力を測る方法

会社の収益力を知るために、「経常利益」を用いた分析が行う経営者も多くいますが、業績を改善させることは簡単なことではありません。

より明確に収益性を分析する上で、さらに「売上高経常利益率」を指標とすることをおすすめしますが、具体的にどのような方法になるのかお伝えしていきます。

 

そもそも「経常利益」とは?

会社が毎年経常的に行う活動で発生する利益「経常利益」であり、本業の利益を示す「営業利益」に対し、経常的に発生する金利や為替に伴う損益などを加減して計算します。

会社経営で気になるのは、事業を続けることで実際にどのくらい稼ぐことができているかということでしょう。

決算書の「損益計算書」を見れば利益は確認できますが、損益計算書に表示される利益は収益から費用を差し引いて残りであり、利益の種類も複数の段階で分けられます。

たとえば、売上総利益・営業利益など種類がありますが、その中で経常利益は本業と本業以外の事業など事業全体の中から経常的に得た利益であり、言い換えれば会社の「実力」をあらわします。

本業だけでなく、投資用不動産から得た家賃収入などがあればその収益や費用も含めた利益が経常利益です。

そのため本業で儲けが出ていた場合でも、本業以外の事業などで借金返済負担が重いときなどは、経常利益が少なくなってしまいます。

 

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「経常利益」から確認できることとは

決算書を作成するとき、企業会計原則による損益計算書では、一定期間のすべての収益・費用を記載して経常利益を示すことが必要とされています。

経常利益は本業だけでなく、本業以外の損益も含めるため、売上高や営業利益だけ把握できない全体の儲けを確認できます。

経常利益の総額で実力の程度を図ることもできますが、売上高に対する経常利益の割合(売上高経常利益率)を見ることで、より詳細に業績判断が可能となります。

売上高経常利益率は、10%程度なら好調な業績と判断できますが、詳しくは後述します。

 

5つの段階にわかれる「利益」の種類

損益計算書に記載される「利益」は、

  1. 売上総利益
  2. 営業利益
  3. 経常利益
  4. 税引前当期利益
  5. 当期純利益

の5種類です。

それぞれの違いについて説明していきます。

売上総利益

本業の活動により稼いだ利益で、売上高から売上原価を差し引いて計算します。

売上原価=期首商品棚卸高+仕入高-期末商品棚卸高
売上総利益=売上高-売上原価

「粗利益」といわれる「売上総利益」を、どのくらい稼いだか知るための目安とする経営者は少なくありませんが、大まかな利益を知りたいときの指標となります。

損益計算書で最初に記載される利益であり、売上高から商品・サービスなどに使う原材料費や製造原価、所要工数など差し引いて算出します。

売上総利益が赤字のときや十分でないときには、事業モデルそのものに問題があり、存続危機に瀕していると考えられるため、見直しや方向転換などの検討が必要です。

営業利益

営業活動による利益であり、売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いて計算します。

営業利益=売上総利益-販売費及び一般管理費

営業活動の成績をあらわす利益ともいえるため、数値が大きければ経営状態が良好で本業による儲けが出ていると判断できます。

反対に営業利益が赤字のときは、本業の継続が困難であると考えられるでしょう。

経常利益

通常の活動で得た利益であり、営業活動で得た利益に営業外収益を加え、営業外費用を差し引いて計算します。

経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用

営業外収益とは受取利息や受取配当金など財務活動による収益のことで、営業外費用は支払利息や支払手数料など営業活動には直接かかわることのない費用です。

税引前当期純利益

経常的活動に加えて臨時的・偶発的な取引を含めた利益であり、経常利益に特別損益を加味して計算します。

税引前当期純利益=経常利益+特別利益-特別損失

当期に納めなければならない法人税・法人事業税・固定資産税などの税金類を支払う前の利益であり、経常利益に非定常的なできことで得た特別利益を加え、予測できなかったことや突発的に起きたことなどの特別損失を差し引けば算出できます。

税引前当期純利益が税金を納める前の原資となるため、最終的な利益に近いとも考えられますが、非定常的な出来事によるものも考慮された利益のため、突発的なことが多く起きれば変動しやすいといえます。

当期純利益

一会計期間における最終的な経営成績を示す利益であり、税金を計上した最終利益です。

税引前当期純利益から法人税等を差し引いて計算します。

当期純利益=税引前当期純利益-法人税・住民税及び事業税±法人税等調整額

経常利益に本業以外の例外的・偶発的な特別利益を加算し、法人税や法人事業税など納めなければならない税金を差し引けば算出できます。

当期純利益を主に気にするのは株主や投資家であり、会社がどのくらい成長しているか測る指標とされます。

事業業績を示す経常利益の方が株価に対する影響は大きいですが、配当金の原資になるのは当期純利益のため、株主や投資家に注視される利益といえます。

 

綿密な分析に欠かせない「売上高経常利益率」があらわすこと

企業の収益を詳細に分析するときに用いる指標「売上高経常利益率」は、経常利益を売上高で割って求めます。

収益性を示す指標として使われることが多く、経常利益と同様に分析において重要な指標とされています。

財務活動も含めた事業全体の収益性を確認するための指標のため、割合が高ければ高いほどよいといえるでしょう。

売上高経常利益率は、

売上高経常利益率(%)=経常利益/売上高×100

で計算します。

 

「売上高経常利益率」を使った4つの分析方法

売上高経常利益率を企業経営や分析に生かしていくための方法として、主に次の4つの手法が考えられます。

・自社分析
・期間比較
・属する業界平均と比較
・属する業界の競合企業や上場企業と比較

それぞれどのような分析方法なのか説明していきます。

自社分析

まずは自社の当期の数値から徹底的に分析しましょう。

経常利益を含め、損益計算書を確認しながら現状を把握することが必要です。

細かな部分の分析というよりは、経常利益からおおまかな状態を知ることを意識してください。

決算書を見れば、現在売上は伸びているのかそれとも低迷しているのか、儲けが出ているのかマイナスなのか知ることができます。

さらに経常利益を売上高で割って算出する売上高経常利益率を見ることで、営業利益以外の財務活動も含めた経常的な営業状態をつかむことが可能です。

資金調達や運用なども含めた総合的な収益性を知るための指標なので、売上高経常利益率が低ければ効率の悪い運営状況であると判断しましょう。

一般的には5%以上を維持し、10%以上を目指すようにしてください。

売上高経常利益率の上昇のためには、売上高をのばすか費用を減少させるか、という二択になります。

期間比較

期間比較とは、昨年度の業績と比べることであり、そもそも会社の業績は1年単位で決算により評価されるものの、経営状況は複数年での比較が必要です。

上昇傾向にあるのなら、新事業の利益水準がたとえ低くても収益性はのびていると判断できます。

新型コロナウイルス感染拡大や、ロシア・ウクライナ問題などのように、世界の状況や会社を取り巻く環境は日々刻々と変化します。

影響が反映されるのが経常利益や売上高経常利益率という指標であるため、複数年で比較することにより変動している要素を捉え、どの問題を解決させるべきか知るための分析につなげることができます。

年度だけでなく、半期・四半期・月次など一定期間ごとの分析を行うことで、季節トレンドなどの影響も把握することができるでしょう。

属する業界平均と比較

自社が属する業界の売上高経常利益率の平均と比較することで、現在どのくらいの立ち位置なのか把握することができます。

属する業界の競合企業や上場企業と比較

業界平均による分析をした後は、競合企業や上場企業の売上高経常利益率と比較してみましょう。

経常利益では、自社の成長性に関しての判断はできますが、業界内での自社の立ち位置分析には他社と比べなければわかりません。

比較分析により経営状況を客観的な視点で知ることができ、成長目標の設定もしやすくなります。

なお、同業他社の経常利益を知りたいなら、たとえば上場企業なら有価証券報告書や決算説明会資料などのIR資料から確認できます。

上場していない企業でも、東京商工リサーチや帝国データバンクなど情報機関から情報を入手することが可能です。

 

売上高営業利益率と他の指標との比較から確認できること

企業の収益や業績を分析するときには、「売上高営業利益率」と「売上高経常利益率」を比べる方法も活用しましょう。

売上高営業利益率は、

売上総利益=売上高-売上原価
営業利益=売上総利益-販売費及び一般管理費
売上高営業利益率=営業利益/売上高×100

で計算します。

売上高に対する営業利益の割合であり、売上高の中で営業利益として残るか意味しています。

売上高経常利益率が売上高営業利益率より高いときには、営業外損益(営業外利益-営業外費用)がプラスであり、本業で余った資産を有効活用できていると判断できます。

ただし売上高営業利益率がマイナスなのに売上高経常利益率がプラスとなる場合は、本業が低迷していると判断できるため、事業の見直しなどが必要となります。

反対に売上高経常利益率が売上高営業利益率よりも低いときには、営業外損益(営業外利益-営業外費用)がマイナスであり、たとえば借入金利息を多く支払っているケースなどです。

経営状況に見合う借入金や金利でお金を借りているのならよいですが、将来的にキャッシュフローに影響を及ぼすのなら、何らかの対策が必要となります。

他にも株式売却損や有価証券評価損が大きくなれば、営業外損益がマイナスになる原因となります。資産運用方法や余剰資金の使い方などを見直さなければならないといえるでしょう。

 

指標を使った分析のメリットとデメリット

経常利益など、企業経営における収益を知る指標を使った分析を行うことで、次年度の当期純利益を予想する基礎的な値として活用が可能です。

企業活動の成果として見れば、役員や従業員に意識付けするときの資料として活用することもできるでしょう。

また、他社の経常利益などを確認すれば、自社がこれから何に投資するべきか判断する材料としても使えます。

経常利益の伸び率を把握し、自社の業績の伸びからバランスよく成長できているか確認していきましょう。

ただし経常利益は、本業と本業以外の事業全体の利益であるため、資産運用や投資用不動産からの収入など財務活動による利益も含みます。

そのため本業でどれほど利益をあげていたとしても、借金が多く債務返済負担が大きければ数値は低くなってしまいます。内情を把握できている管理部門の社員などは状況が理解できるとしても、それ以外の従業員には納得し難い数値になる可能性があることはデメリットです。

 

「売上高経常利益率」を向上させるため必要なこと

売上高経常利益率を上昇させる方法は、

  • 売上高を上昇させる
  • 費用を減少させる

という2つです。

売上高は適切な施策を打つことができているか確認し、費用面ではコスト削減できる支払いはないか確認してみましょう。

勘定科目ベースで分析し、後は取引ベースでも分析して行くことが必要となります。

 

まとめ

経常利益や売上高経常利益率などを分析することで、会社の収益力を知ることができ、今後の戦略や判断につなげることができます。

特に売上高経常利益率は会社の経常的な事業活動の収益性を示すため、分析においては重視するようにしましょう。

いろいろな比較などで自社の収益性を確認し、向上させるための取り組みを実践していくことが必要です。

利益は会社の経営成績を示す値であり、指標です。利益を知ることと分析することは極めて重要と認識しておきましょう。

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