事業承継の課題と中小企業がこれから検討するべきこととは


中小企業の経営者は高齢化が進んでおり、事業承継は急務ともいえる課題とされています。

事業承継を円滑に進めるためには、中小企業がどのような課題を解決しなければならないのか、今抱える現状も踏まえて徹底解説していきます。

 

事業承継の現状

中小企業庁が公表している「2021年版 中小企業白書」を見れば、事業承継に対する課題が確認できます。

2009年から2016年の7年間で、

  • 中小企業の数は約63万社
  • 小規模企業数は約62万社
  • 中規模企業数は約1万社

と、それぞれ減少しています。

さらに経営者の年齢層は、

  • 50~54歳
  • 60~64歳
  • 65~69歳
  • 70~74歳

に分散しており、70歳以上の経営者の割合は年々多くなっています。

経営者の年齢上昇に伴って事業承継を終えた企業もあれば、そうでない企業もあるなど二極化しているようです。

事業承継を終えた企業も、従来までは親族内承継が多かったですが、現在は従業員や社外の第三者などへの親族外承継が増えています

そして経営者の高齢化が背景と考えられる休廃業・解散件数は、2020年が調査開始以降、最多である約5万件となりました。

 

事業承継が進まない課題が解決されないときの問題

中小企業の事業承継が進まない状態が続けば、日本の企業の大部分を占める中小企業数は減少することになります。

日本経済自体が縮小するリスクを抱えることとなり、これまでの技術やノウハウ、雇用などすべて失うことになるでしょう。

 

事業承継が進まない理由

事業承継が進まない中小企業は増えていますが、具体的には次の背景が関係していると考えられます。

後継候補が見つからない

経営者の年齢ごとに見たときの後継者不在率は2020年時点で、

  • 60代 48.2%
  • 70代 38.6%
  • 80代 31.8%

となっており、経営者年齢が高くリタイア間近であるのにもかかわらず、後継者が不在といった企業が少なくない状況です。

株式分散リスクなど相続問題を解決できない

自社株の評価額が高ければ高いほど、後継者は高額の株式買取資金を必要とすることになります。

相続税や贈与税などの税負担が重くなることが想定されるため、後継者に自社株を集中して承継させる道筋を立てていなければ事業承継が長期化するリスクが高くなってしまいます。

 

事業承継の課題を解決する方法

中小企業が抱える事業承継の課題を解決するには、国が整備している次の制度などをうまく活用するようにしましょう。

「事業承継・引継ぎ支援センター」を活用する

「事業承継・引継ぎ支援センター」は、経済産業省や都道府県の商工会議所による事業であり、後継者がいない中小企業や経営資源を引き継ぎたいと希望する中小企業などに助言や情報を提供しています。

後継者が見つからないという課題解決に向けて、第三者とのM&Aによるマッチング支援も行っているようです。

「経営承継円滑化法」による制度を活用する

「経営承継円滑化法」とは平成27年8月に制定された法律であり、事業承継を円滑に進めることを目的として次のような制度を設けています。

事業承継税制

経営者から後継者に自社株を移転したときの相続税や贈与税について、一定要件を満たせば納税が猶予・免除がされる制度です。

遺留分に関する民法の特例

後継者を含めすべての推定相続人が合意し一定要件を満たせば、現経営者から後継者へ移転する自社株を相続財産から除外することを可能とする特例です。

経営承継円滑化法による金融支援

事業承継の際に都道府県知事の認定を受けることで、

  • 日本政策金融公庫など融資(後継者が株式取得資金などに関しての融資を受ける)
  • 信用保証協会の保証枠を別枠で保証(事業承継用の資金を、通常の信用保証枠と別枠で保証)

などの公的な金融支援を利用できます。

所在不明株主に関する会社法の特例

株主名簿に記載されている所在不明の株主保有株式は、認定を受けることにより株式取得についての手続時間を短縮できます。

事業承継・引継ぎ補助金を活用する

事業承継やM&Aによる経営革新などを支援する補助金であり、事業再構築・設備投資・販路開拓など行うときに必要な設備投資・販路拡大の経費を支援します。

補助金の上限は250~500万円以内(上乗せ額200万円以内)で、補助率上限は経費の2分の1となっています。

専門家などに相談する

事業承継が進まないことで悩みを抱えているのなら、事業承継に詳しい専門家などに相談するのも方法といえます。

相談できる専門家として挙げられるのは、

  • 税理士
  • 弁護士
  • 行政書士

などです。

また事業承継の相談に応じてくれる機関として挙げられるのは、

  • 民間の銀行など金融機関
  • 自治体の事業承継引継ぎ支援センター
  • 商工会議所・商工会

などですが、他にも自治体が独自で事業承継の個別相談会など開催していることもあります。

中小企業の事業承継は経営者の高齢化が進んでいるのにもかかわらず、事業承継への対策が何も行われていないなど、様々な課題を抱えた状態です。

これらの課題を解決するためにも、経営者一人で抱え込むのではなく、利用できる制度を活用したり専門家に相談したり準備を進めるようにしておきましょう。