中小企業が倒産を防止するときに利用できる制度とは?

どれほど安全に経営を続けているつもりでも、新型コロナウイルス感染症の影響のように、いつ倒産危機にたたされるかわからないため防止する策を取っておくことは大切です。

そして自社は健全経営でも、取引先が倒産してしまい連鎖してその影響を受ける可能性もあるため、防止するために利用できる制度は有効に活用しましょう。

不測の事態や有事で倒産危機に直面した中小企業が、すみやかに事業資金を借入れできる共済制度として「経営セーフティ共済」などもあります。

現在約54万という企業や事業者が加入している制度なので、倒産防止のために有効活用できる内容か確認しておきましょう。

 

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)の特徴

取引先が突然倒産してしまったとき、本来入金される予定の売掛金は回収できず、自社の手元の資金は不足してしまう可能性があります。

そのようなもしもに備えて利用できるのが「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)」で、取引先が倒産したときの連鎖倒産や経営難に陥ることを防止する制度です。

掛金の最高10倍・上限8,000万円までを無担保・無保証人で借入れでき、支払った掛金は損金や必要経費として算入できることもできます。

共済金の借入れが可能となる「倒産」

経営セーフティ共済で借入れが可能となる取引先の「倒産」とは、

  • 法的整理
  • 取引停止処分
  • でんさいネットの取引停止処分
  • 私的整理
  • 災害による不渡り
  • 災害によるでんさいの支払不能
  • 特定非常災害による支払不能

などです。

夜逃げなどを理由とする取引先の倒産は借入れできません

そして経営セーフティ共済には、次のような安心できるポイントが特徴です。

掛金の10倍まで無担保・無保証人での借入れが可能

取引先が倒産してしまったときに可能となる共済金の借入れは、担保の差し入れも不要で保証人をつける必要もありません

借入れできる上限は、

  1. 回収困難となった売掛金債権など被害額
  2. 支払った掛金総額の10倍(最高8,000万円)

どちらか少ないほうの金額です。

掛金を多く支払っておけば、その分借入れ可能となる金額が多くなりますが、掛金総額800万円まで積み立てできます

なお、経営セーフティ共済での被害額とは、取引先倒産により回収できなくなった売掛債権と前渡金返還請求権のことです。

貸付金・融通手形・不動産賃貸料などは対象に含まれませんので注意してください。

また、倒産した取引先に対し、買掛金などがあれば被害額分と相殺されます。

取引期間が1年以上の売上高20%以上を占める主要取引先が倒産してしまったときには、回収できなくなった売掛債権額に一定金額が加算される仕組みとなっています。

取引先が倒産したらすぐに借入れが可能

取引先が倒産したことで売掛金の回収が困難な状態となったときには、事業者との取引が確認でき次第、すぐ資金の借入れが可能となるためスムーズな資金調達が可能です。

支払った掛金は税制優遇の対象

毎月支払う掛金は5千円から20万円まで自由に選択でき、あとで増額や減額することも可能です。

そして支払った掛金は、法人であれば損金として、個人事業主であれば必要経費として算入可能となり節税対策にも有効です。ただし個人事業の場合で不動産所得など、事業所得以外の収入である場合には必要経費として算入できませんので注意してください。

解約手当金を受け取ることもできる

たとえ自己都合で解約したときでも、支払った掛金が無駄になるのではなく、解約手当金の受け取りが可能です。

12か月以上掛金を支払っていれば、掛金総額の8割以上が戻ってきますし、40か月以上納めていたのなら掛金全額を戻してもらえます。

 

経営セーフティ共済の返済期間と返済方法

経営セーフティ共済の返済期間は借入金額により変わりますが、すべての借入れに6か月の据置期間が設けられているため、すぐに返済がスタートしないのもメリットです。

6か月据置期間を経過した後は、

  • 返済期間5年…54か月
  • 返済期間6年…66か月
  • 返済期間7年…78か月

とそれぞれの均等分割で毎月返済することになります。

共済金の借入れは無利子ですが、借入れ後は共済金の借入額の10分の1相当額が支払った掛金から差し引かれます

 

借入れできないケースに要注意

取引先が倒産した場合でも、次のいずれかに該当するときには共済金の借入れはできないので要注意です。

  • 取引先の倒産が経営セーフティ共済に加入して6か月未満に発生したものの場合
  • 経営セーフティ共済に加入してから取引先が倒産する日までに6か月分以上掛金を支払っていない場合
  • 共済金借入れ手続が取引先の倒産日から6か月を経過した後の場合
  • 共済金の借入れのとき契約者が中小企業者でない場合

経営セーフティ共済に加入しても、毎月の掛金を支払っていないときや倒産して一定期間経過したケースでは資金調達できないと留意しておきましょう。

 

経営セーフティ共済以外にすぐ資金調達できる倒産防止方法

経営セーフティ共済は取引先が倒産してしまったときに借入れが可能となり、「倒産」にも一定の要件があります。

スムーズに資金調達できる点はメリットですが、確認できるまで時間がかかってしまうこともあるでしょう。

この場合、ファクタリングであれば早ければ即日資金調達できる可能性があります。

ファクタリングは保有する売掛債権を現金化する方法なので、借入れではなく借金も増えません。

資金調達できる額は売掛債権の額面までに限られますが、すぐにでも資金を調達し倒産を防止しなければならないときでも利用できますので、有効活用するとよいでしょう。