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2021.09.21 / 最終更新日:2021.09.21

平31(ワ)7026号、令元(ワ)26932号、令元(ワ)27042号

事案の概要
本件は、2社のファクタリング会社で資金調達をした会社(以下「A社」とします)が「ファクタリング契約は実質的に金銭消費貸借契約であり無効」と主張して返金を求めた事案です。ファクタリング2社からも「反訴」が提起されました。

ファクタリング会社への既払い金返還請求
A社はファクタリング会社2社(以下「X社」「Y社」とします)で資金調達を受け、継続的に取引をしていました。
ところが取引の途中で「ファクタリング契約は実質的に金銭消費貸借契約であり、貸金業法や出資法を潜脱する悪質なもので公序良俗に反し、無効」と主張し始めました。X社及びY社へ払った金銭を返還請求するとともに、未払いのままになっていた回収債権の支払いも拒否しました。
A社がX社へ返還請求した金額は132万円、Y社へ返還請求した金額は125万円でした。

ファクタリング会社が利用会社へ未払金の支払い請求
X社とY社は「ファクタリング契約は有効な債権譲渡契約である」と反論。受け取った金銭の返還には応じず、反対にA社に対し未払いの回収債権の支払いを求めました。
X社がA社へ返還請求した金額は125万円、Y社がA社へ返還請求した金額も同じく125万円でした。

利用会社が取引履歴の開示請求
A社はX社へ払いすぎた金額を計算するために「これまでの取引履歴」の開示を求めました。貸金業法上「貸金業者」は債務者から取引履歴の開示請求を受ければ速やかに開示しなければならないと定められているため、その規定を根拠とした請求でした。

X社は「A社との取引は債権譲渡契約であり金銭消費貸借ではないので貸金業法は適用されない」と主張、取引履歴の開示請求に応じませんでした。
そこでA社はX社の取引履歴不開示によって「精神的苦痛」を受けたと主張し、10万円の慰謝料を請求しました。

本件の請求関係まとめ
以上より本件では、以下の3本の事件が起こって併合審理されました。

●A社からX社、Y社への既払い金返還請求とX社への慰謝料請求(本訴請求)
●X社からA社への未払金請求(反訴請求)
●Y社からA社への未払金請求(反訴請求)

なお「反訴」とは本訴の被告が原告を訴え返す手続きをいいます。

裁判の経過
A社の主張
裁判においてA社は、本件のファクタリング契約は「公序良俗違反」あるいは「貸金業法42条1項」により無効と主張しました。
貸金業法42条1項は、貸金業者が年利109.5%を超える利率を定めて貸付を行った場合、その金銭消費貸借契約を無効と定めています。A社とX社及びY社のファクタリング契約は「年率」にすると109.5%を超えていたので、本件ファクタリング契約が金銭消費貸借契約であれば貸金業法42条1項違反となり、当然に無効となります。

本件契約が金銭消費貸借契約である根拠
A社の主張の骨子は「本件の契約が債権譲渡担保つきの金銭消費貸借契約」というものです。
契約の法的性質の判断基準として「ファクタリング契約が債権譲渡か金銭消費貸借契約かは、債権に対する支配力を無条件で譲受人に移転するかどうかで決するべきである」と主張しました。契約によって無条件で譲受人に支配力が移転するなら債権譲渡契約といえるけれども、譲受人への支払いが不履行となった時点ではじめて譲受人が支配力を取得する場合には譲渡担保つきの金銭消費貸借になる、という意味です。

対抗要件が具備されない2社間ファクタリングの場合、当面は譲受人であるファクタリング会社が債権の取り立てを行う予定がないため「支配力を獲得した」とはいえません。
よってファクタリング契約は「債権譲渡担保つき金銭消費貸借契約」といわざるをえず、高すぎる金利を定めた本件2社との契約はいずれも無効になる、と結論づけました。

X社、Y社の主張
A社に対する反論
X社、Y社はいずれもA社の主張を否定し「本件ファクタリング契約は債権譲渡契約」と反論しました。
根拠は以下の通りです。
●本件ファクタリング契約は、「債権の売買契約」と「債権取立の業務委託契約」であり、金銭消費貸借契約ではない
●第三債務者の債務不履行の危険はファクタリング会社が負っている
●実際に契約書とおりに債権の交付が行われている
●債権の額面額と債権の買取価額との間に比例関係がない
●第三債務者の信用調査を行った上で債権の買取が行われている
●X社はA社から債権譲渡通知用の書類を受け取り、いつでも対抗要件を具備できるよう準備していた
●債権譲渡の対抗要件を備えていなくても債権譲渡契約は有効である
●そもそも、第三債務者へ債権譲渡の通知を送らず対抗要件を備えなかったのはA社自身の希望に沿った対応であり、今になってそれを根拠に「金銭消費貸借契約である」というのは信義則に反する

本件ファクタリング契約が債権譲渡契約であれば、手数料が高くても公序良俗違反になりませんし貸金業法が適用されないので貸金業法違反にもなりません。
またX社は取引履歴の開示請求に応じませんでしたが、貸金業法の適用がないので開示に応じなくても契約は無効になりません。

A社への請求
A社はX社とY社でファクタリングを利用して資金調達を受け、業務委託契約によって回収した債権をX社とY社へ払う約束をしていました。ところが途中で「契約は無効」と主張し始めたため、回収した債権を支払わず未払いの状態になっていました。
そこでX社はA社に対し契約にもとづく取立金の引き渡しとして125万円を請求。Y社はA社に対し、債務不履行にもとづく損害賠償請求として125万円の支払いを請求しました。

裁判所の判断
A社とX社の契約について
裁判所はA社とX社のファクタリング契約の性質について、以下のような理由で「債権譲渡契約」と認定しました。
●契約書において債権譲渡契約と記載されており、譲渡担保目的ではないことも明記されている
●X社は第三債務者の審査を行いその信用にもとづいて債権の買取価格を決定している
●第三債務者の無資力リスクはX社が負っており、買戻特約もついていない
●契約上、一応は債権譲渡の対抗要件を備えないことになっていたが、X社側がいつでも撤回して債権譲渡通知を送れるように準備も行われていた
●手数料は債権額面の2~3割程度であったが、X社が第三債務者の無資力リスクを負うことから考えると不当に高すぎるとはいえない

A社とY社の契約について
A社とY社の契約については、次のような理由によりやはり「債権譲渡契約である」と認定されました。
●契約書において債権譲渡契約と記載されており、譲渡担保目的ではないことが明記されている
●第三債務者の無資力リスクはY社が負っており、未払いとなったとしてもY社はA社へ償還請求権が認められない契約内容であり、買い戻しは予定されていなかった
●債権譲渡の対抗要件を備えない点については、Y社側がいつでも撤回できることになっていた
●手数料は債権額面の2割程度であったが、一般的な債権譲渡契約における手数料率として高すぎるとはいえない

結論的にA社とX社、Y社とのファクタリング契約はいずれも有効な「債権譲渡契約」であるから公序良俗違反にならないし、貸金業法や出資法等の適用もなく無効にならないと認定しました。
X社やY社がA社へ受け取った債権額を返還する必要はなく、反対にA社はX社とY社に対し、未払い金の支払いをしなければならないと結論づけられました。

X社への慰謝料請求について
A社はX社に対し、取引履歴を開示しなかったことについて「慰謝料」を請求しましたが、裁判所の認定によると、そもそも本件は債権譲渡契約であって金銭消費貸借契約ではなく貸金業法が適用されません。
X社に取引履歴の開示義務はないと判断され、慰謝料請求も認められませんでした。

講評
本件では、ファクタリングを利用した会社が「ファクタリング契約は実質的に譲渡担保つき金銭消費貸借契約である」と主張し、ファクタリング会社へ既払い金の返還請求や慰謝料請求をしています。

これに対し裁判所は「第三債務者への調査が行われたこと」「第三債務者の未払いについての危険をファクタリング会社が負担していたこと」などを重視し、契約の法的性質を債権譲渡契約と認定しました。X社とY社は債権譲渡の対抗要件を備えていませんでしたが「いつでも対抗要件を備えられるよう準備していたこと」なども考慮されています。

このようにファクタリング契約の法的性質を決定する際には「誰が第三債務者の不払いリスクを負担するか」「第三債務者の調査が行われたか」などが重要なポイントとなります。

第三債務者が不払いを起こしたときの返還請求権や買戻特約がついておらず、契約時に第三債務者の信用調査が行われて手数料率が定められた場合、ファクタリング契約は「債権譲渡契約」と認定される可能性が極めて高いといえるでしょう。

本件では利用企業からファクタリング会社へ貸金業法違反にもとづく「慰謝料請求」も行われていますが、こちらについても契約が債権譲渡と認定されれば当然認められません。

今後の参考にしてください。