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2020.11.17 / 最終更新日:2020.11.17

平30(ワ)17313号 代理受領金支払請求事件

1 事案
 本件は、二者間売掛債権早期資金化において、売掛債権早期資金化業者が原告となり、集金額を支払わない客を被告として訴えた事案であり、これに対し、客は、二者間ファクタリグが違法な暴利行為に該当する金銭消費貸借取引であり、公序良俗に反し無効であると反論して争った。
2 争点に対する判断
⑴ 回収リスクを客が負担していたとは認めらない
 客は、売掛債権早期資金化業者に譲り渡した債権につき、その債権譲渡後も、回収リスクは依然として客が負担していたので、二者間ファクタリグは実質的に金銭消費貸借契約であると主張した。
 しかし、裁判所は、「本件両契約には,被告が第三債務者である日本ファブテックないし大成建設からの集金ができなかった場合にまで,被告自身の資金により原告らに対する支払をなすべき義務を定めたと解しうる約定はなく,また,被告に本件両債権の買戻しを強制するような約定もないことが認められるところであり,本件両債権の回収リスクを被告が負担していた旨の被告の主張は採用することができない。」と判示し、客の当該主張を採用しなかった。
⑵ 集金業務委託は債権譲渡契約と両立する
 客は、第三債務者からの集金義務が客に課されていたことからも、二者間ファクタリグの実質は金銭消費貸借契約であると主張した。
しかし、裁判所は、「集金業務を債権譲渡人に委託することで,第三債務者に債権譲渡の事実を知られないようにすることは,債権譲渡契約と相容れないものではない」と判示し、客の当該主張を失当であるとした。
⑶ 2割程度の割引率での買取りでは暴利行為に当たらない
 裁判所は、「回収予定額と代金額の差額を利息と見た場合にはその利率が年304%及び年745%にも相当するものであることは被告指摘のとおりである」としつつも、「集金業務を被告が行うことが併せて約定されており,集金後の原告らへの回収にリスクを伴う取引であったことを考慮すると,2割程度の割引率での買取りが暴利行為に当たるものとは必ずしもいえない」と判示し、そのほかに本件の二者間ファクタリグが公序良俗に反するものと評価する事情もないとして、客の主張を排斥した。
3 講評
 二者間売掛債権早期資金化の合法性が争われる場合、主として、⑴「回収リスク」を誰が負うのか、⑵「二者間」の形式を採ることが脱法的か、⑶手数料が暴利か、という点が問題となるところ、本判例は、正にこれらについて正面から答えたものです。
 上記⑴に関しては、第三債務者から回収できなかった場合に客にその回収リスクを負担させる構造になっていたかが重視されますが、その一つのメルクマールとして「買戻しの規定」の有無が挙げられます。本件でも同規定がなかったことが判示されていますが、二者間ファクタリグの合法性を認めた先例である東京高等裁判所平成29年5月23日判決においてもこの点が挙げられているので、まだそのような規定が入っている契約書を使用している売掛債権早期資金化事業会社は危険であるとも言うことができます。
 上記⑵に関しては、集金業務の委託については、取引先(第三債務者)に売掛債権早期資金化を利用していることを知られたくないという中小企業のお客様のニーズがあることは間違いありません。「二者間」にすることにつき顧客からの願い出があることは明らかになっていることが重要なポイントとなりました。
 上記⑶に関しては、上記⑵のとおり「二者間」とすることのニーズがあり、その反面、第三債務者から集金した顧客が使い込みをするリスクがあることから、「2割程度」の手数料も実務的に許容されていることを明示した判例であり、この点において先例として意義を有するものと言えます。