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2021.09.09 / 最終更新日:2021.09.09

平27(ワ)24214号 供託金還付請求権帰属確認請求事件

事案
信用金庫がファクタリング会社を訴えた事例です。
原告となった信用金庫はある運送会社(A社)へ貸付をしていましたが、A社は資金繰りに窮してファクタリングを利用し資金調達を行いました。その際ファクタリング会社は第三債務者へ確定日付のある債権譲渡通知を送り、対抗要件を備えました。
債務整理と供託
その後A社が倒産状態となり弁護士に依頼して債務整理を開始。A社は税金も滞納していたので税務署による滞納処分が行われました。信用金庫が仮差押命令を取得したところ、第三債務者は代金の真正な権利者が不明となったため「供託」を行いました。

原告(信用金庫)への弁済拒否
信用金庫はA社に対する仮執行宣言つき判決を受け、さらにA社の国に対する債権について、債権差押命令の発布を受けました。
ところがファクタリングの対象となった債権についてはファクタリング会社が先に対抗要件を備えていたため、国としては「830万5424円(ファクタリングの対象となった債権)については誰に権利があるのか不明」とし、原告への弁済を拒否しました。

そこで原告はファクタリング会社へ対し「被告への債権譲渡は無効であり、被告に供託金還付請求権は認められない。自社へ供託金還付請求権を認めるべき」として、権利の確認を求めて提訴しました。

裁判の経緯
原告の主張
原告は以下のように述べて「被告への債権譲渡は無効」であり、供託金の取り戻し請求件は原告に認められると主張しました。

譲渡禁止特約について故意や重過失がある
被告へ譲渡された債権には譲渡禁止特約がついており「被告は譲渡禁止特約について知っていたか、知らなかったとしても重過失がある」ため被告への債権譲渡は無効

本件債権譲渡は弁護士法73条違反である
「被告は業務として債権譲渡を受け訴訟や示談などの方法で実行しているので弁護士法73条に違反する」
※弁護士法73条は、「弁護士以外のものが他人の権利を譲り受けて、訴訟、調停、和解その他の手段によって権利の実行をすることを業とすることができない。」と定めています。

本件債権譲渡は貸金契約である
「ファクタリング取引は、外見上は債権譲渡であっても実質的にはお金を貸し付けて弁済期がきたら資金を回収する貸金契約と同じ性質を持つ」
「ファクタリングは手形取引と共通の機能をもっている」
「本件では貸金契約であるにもかかわらず被告が貸金業登録をせずに違法に貸付が行われたので、無効である」

公序良俗違反
本件では830万5424円の額面額の債権が672万7394円で取引されているが、これを年利に直すと329%、貸金契約であれば明らかに暴利である。
よって本件ファクタリング契約は公序良俗に反して無効。

被告の反論
譲渡禁止特約に関して重過失はない
貸付の際、被告はA社に対し「譲渡禁止特約がついていないことの確認」をとり同意書も取り付けている。契約当時、他に譲渡禁止特約の存在を伺わせるような事情もなく、被告には重過失は認められない。
重過失があったとしても債権譲渡は有効
本件では第三債務者へ債権譲渡通知が送られ、第三債務者は異議をとどめず承諾している。そこで仮に被告に重過失があったとしても債権譲渡は有効に成立する。
弁護士法73条に違反しない
「被告はファクタリングによる事業者への資金調達支援を業務とする会社であり、みだりに訴訟や調停などのトラブルを起こして介入しようとするものではない。
社会的経済的に正当な範囲でファクタリング業務を行っており弁護士法73条に違反しない」。
貸金業法に違反しない
「本件ファクタリング取引は買い戻し義務のないノンリコースのタイプであり、金銭消費貸借や手形取引類似のものとはいえない。第三債務者の倒産等の回収リスクも被告が負っている以上貸金契約に該当せず、被告が貸金業登録をしていなくても貸金業法に違反しない」。
公序良俗違反にならない
本件ファクタリングの手数料率は粗利で約19%であり、一般的なファクタリング契約として暴利とはいえない。

裁判所の判断
譲渡禁止特約について
本件ではA社のS社に対する運送債権に譲渡禁止特約がついていましたが、被告はファクタリングを実行する際にA社から確認書や同意書をとるなどして「譲渡禁止特約が付されていないこと」を慎重に確認していました。また契約時においてA社が虚偽を述べていると疑われるような事情もなかったため被告が譲渡禁止特約について知っていたとはいえず、重過失もなかったと判断されました。

弁護士法73条違反について
弁護士法73条違反となるのは「弁護士ではないものが権利の譲渡を受けてみだりに訴訟を誘発し、紛争を助長したり弁護士法72条を潜脱したりする場合」と理解されています(最高裁平成14年1月22日)。
※弁護士法72条は弁護士以外のものが業として法律業務を行う報酬を得ることを禁止している法律です。

ファクタリング業者が債権譲渡を受ける目的は資金調達を行って手数料を得るためであり、訴訟や紛争をみだりに誘発するためではありません。弁護士以外のものが法律業務を行うことを禁止する弁護士法72条にも抵触しないので弁護士法違反の点はないと判断されました。

本件取引は貸金契約ではない
確かにファクタリングには債権譲渡に似た性質もありますが、貸付と異なりあくまで「売買として債権を買い取る」契約です。また本件では買戻特約もついておらずノンリコースであり被告が不払いリスクを負っていたので貸金契約と同様とはいえません。
手形割引の場合には譲渡人に遡求義務があり銀行取引約定書において買い戻し義務が定められていますが、買い戻し義務のないファクタリング契約は手形割引とは異なることが明らかです。
よって本件ファクタリング契約は貸金契約に該当しないと判断されました。

公序良俗違反にならない
本件ファクタリング契約の性質は貸金契約ではなく債権譲渡契約であり、手数料も債権譲渡契約におけるものとしては暴利とはいえず、公序良俗違反にもならないと判断されました。

結論
原告の主張はすべて排斥され「先に対抗要件を備えた被告」に優先権が認められるので原告の請求は棄却されました。つまりファクタリング会社に優先的な供託金取り戻し請求権が認められたのです。

講評
ファクタリング実施の際には「譲渡禁止特約の確認」が重要
本件ではファクタリング業務における「譲渡禁止特約がついていないことの確認」の重要性が示されています。
被告はファクタリング契約の際にA社から同意書をとるなどしてしっかり譲渡禁止特約の有無について確認していたため「重過失はない」と判断されました。
もしも確認していなければ「重過失あり」と判断され、ファクタリング会社に請求権が認められなかった可能性があります。
ファクタリング業者が事業者からファクタリングの申し込みを受けた場合、必ず当該債権に譲渡禁止特約がついていないか調査して記録を残し、同意書や誓約書などの書面の差し入れを求めるべきといえます。

弁護士法73条違反に要注意
ファクタリングと弁護士法73条の関係にも注意が必要です。
既に紛争が生じている案件や紛争になりそうな案件においてむやみに債権を取得すると「みだりに紛争に介入しようとしている」として弁護士法73違反とされるリスクがあります。ファクタリングの申し込みを受けた場合、紛争案件ではないかしっかり確認して記録を残すべきと考えます。
なお「ファクタリング利用時」に紛争が生じていなければ、後に支払拒絶などの紛争が生じたとしても通常問題にはなりません。