裁判事例

正しい

売掛債権早期資金化サービスを

広めるために。

裁判を通じて、売掛債権早期資金化サービス事業の
正しさ、適切な対応、責任の範囲が明確になっています。
下記事件を参考にしながらわたしたちはこれからも
適切で正当な売掛債権早期資金化サービス事業を展開してまいります。

東京地方裁判所 令和2年(ワ)第19565号 不当利得返還請求事件
1. 事案の概要
本件は、土木物流等を主要事業とするA社が当社を訴えたケースです。
 
A社と当社のファクタリング契約の内容
A社はかつて、資金調達のために6回にわたって当社におけるファクタリングサービスを利用しました。
A社が当社へ譲渡した債権の額面額は合計4245万円、当社の手数料が642万円分差し引かれたため、A社が受け取った譲渡金額は合計3603万円です。
これは事業者ファクタリングの一般的な相場です。
また当該ファクタリング契約においては、債権の譲受人である当社ではなく譲渡会社であるA社が自ら債権回収を行い、回収した金額を当社へ支払う内容となっていました。いわゆる「2社間ファクタリング」の事例です。

  A社による当社への不当利得返還請求
A社は上記の通りファクタリングを利用して資金調達を行ったのですが、後に当社に対し、弁護士をつけて「ファクタリング契約は実質的に貸金契約であり、手数料が高額過ぎるために過払い金が発生する」と主張してきました。 本来、ファクタリングは「債権譲渡契約」です。
債権譲渡契約には利息制限法は適用されません。
それより超過する手数料の設定も認められますし、ファクタリング業者が貸金業者として登録する必要もありません。そもそもファクタリング業者は金融機関よりも高いリスクを被っている以上、銀行と同じ利率ではビジネスが成り立たないのです。
金融機関で融資を受けられない状況の中小企業がファクタリングを頼って資金調達を行い、生きながらえているケースも多々あります。
ところがファクタリング契約が貸金契約となると「利息制限法」や「貸金業法」が適用されるので、高額なファクタリングの手数料は「利息制限法違反」となってしまいます。
するとファクタリング利用企業はファクタリング会社に対し、払いすぎた「利息」の返還請求ができるのです。いわゆる「過払い金請求」です。
 
A社は上記のような理屈を展開し、当社との間の2社間ファクタリングは「実質的に貸金契約」であり、利息制限法に引き直して計算すると597万4309円の「払いすぎ利息」が発生している、と主張しました。
 
その上で訴訟においては597万4309円のうち「180万円」の返還を求めて提訴してきたのです。
 
2. 裁判の経緯
本件裁判の経緯について、順を追ってご説明します。

A社の提訴内容
まずはA社が当社を提訴しました。
A社の主張内容は以下のようなものとなっています。

  「A社はPMG社とファクタリング契約を締結したが、これは実質的には債権譲渡契約ではなく貸金契約である」理由として挙げられた事情は以下の通りです。

■ 譲渡されたのが債権の一部であった
本件でA社から当社へ譲渡されたのは債権全体ではなく一部であったことから、当社が未回収の危険を負わないとして「ファクタリング契約より貸金契約に近い」と主張されました。
■ A社が債権回収を行う業務委託契約が締結されていた
譲受会社である当社ではなく譲渡会社であるA社が債権回収を行うとする業務委託契約が締結されており、いわゆる2社間ファクタリングが行われたため、当社は債権未回収の危険を負わないものとして「本件契約は実質的に貸金契約」と主張されました。
■ A社は「債権の買戻し」を行わねばならない立場であった
本件ファクタリング契約には「買戻し特約」はついていませんでしたが、A社は「本件においてA社は買戻しを行わねばならない立場であった」と主張しました。
理由としては「債権未回収となってPMG社が取引先に債権の督促状を発送すると取引先による信用を失うため、A社としては直接回収を防止するため買い戻しせざるをえない」というA社の内部事情が挙げられていました。
上記の通り、本件でA社と当社との間で締結されたファクタリング契約は実質的に貸金契約なので利息制限法が適用され、払いすぎた利息である597万4309円のうち180万円の請求を求める、というのがそもそものA社による主な主張となります。
 
当社の反論
上記のA社による主張に対し、当社は以下のように反論しました。
 
「ファクタリング契約は債権譲渡契約である」
「債権譲渡契約である以上、利息制限法の適用はない」
 
以下で詳しく解説します。
 
そもそもファクタリング契約は債権譲渡契約であるファクタリング契約は、本来的な性質上「債権譲渡契約」です。 事業者がファクタリング会社へ売掛金を譲渡して早期に資金を調達し、ファクタリング会社が手数料を受け取って利益を得るビジネスモデルであり、世界でも広く普及しています。
近年ではみずほフィナンシャルグループやHISなどのコンプライアンスを重視する大手金融会社や旅行会社などもファクタリング業へ参入しており、明らかに合法ですし世界でも広く認められているビジネスの一形態です。ファクタリングが貸金業ではなく債権譲渡であることについては東京地裁における他の判決によっても明らかにされており、 すでに確立された実務となっていると言っても過言ではない、と主張しました。
 
債権の一部譲渡であることと債権譲渡契約であることは矛盾しない
A社は本件において債権の一部譲渡が行われたことにより本件ファクタリング契約が貸金契約である、という主張を展開していました。
しかし債権の一部譲渡契約は法律上有効であり、一部譲渡だからといって貸金契約になるという理屈は成り立ちません。そもそも企業の資金調達は「必要な範囲」で行うべきものであり、常に債権の全額を譲渡しなければならないとすると利用企業にとっても不利益が及びます。債権の一部譲渡であるから貸金契約であるという乱暴な理屈が成り立たないことは明らかと主張しました。
 
買戻特約はついていない
本件ファクタリング契約に買戻特約はついていませんでしたが、訴訟になるとA社は突然「事実上買い戻しをせざるを得ない立場であった」などと主張してきました。「債権が未払いになったとき、A社が買戻しをしなければPMG社が取引先に督促してしまい、A社への信用が損なわれる。
それを防止するために買い戻しをせざるを得ない」というのです。
しかしそのような事情はA社の内部事情であり、買戻特約とは異なります。契約上は、A社は自社で回収できるだけの債権を当社へ引き渡せばそれ以上の責任を負わないのですから、買戻し義務がないことは明らかといえるでしょう。契約上も「売主(A社)は集金した金額の限りで指定された期日までに買主(当社)に引き渡せば足りる」と明示されており、A社に「買戻義務」や「回収不能となった場合の全額支払い義務」がないことが明文化されています。
このような契約上明らかな事項について、無理やり「買戻し特約がついている」というA社の主張に全く根拠はない、と主張しました。
 
ノンリコース型のファクタリング契約である
当社が実施しているファクタリング契約は、完全に「ノンリコース型」です。
ノンリコース型とは、取引先(第三債務者)の倒産等の事情によって債権が未回収となった場合において、ファクタリング会社が利用会社に対し、別の資金によって補填するよう請求できないタイプの契約です。
つまり取引先に債務不履行があってもファクタリング会社は利用企業へ買戻しやその他の請求をできない構造となっており、不払いの最終的な危険はファクタリング会社が負います。
これまでの裁判例により、ノンリコース型のファクタリング契約の場合には「債権譲渡」とみなされ、そうでない契約(取引先による不払いがあったときに買戻しやその他の方法によって利用企業へリスクを転嫁させる内容)の場合にはファクタリング契約が「貸金契約」と認定される実務が定着しつつあります。
 
本件において、当社は「ノンリコース型」を貫いているので、ファクタリング契約は債権譲渡契約としかいいようがなくA社の主張に理由はない、と反論しました。

  以上よりA社の主張には理由がなく棄却されるべき、と結論づけました。

  A社の再反論
上記に対し、A社は以下のように反論してきました。
 
PMG社が売買対象債権についての調査をしていない
A社は本件ファクタリング契約設定の際、「PMG社が売買対象債権について詳細な調査を行っていない」と指摘しました。債権譲渡を受けるなら「第三債務者の資力や信用」が重要なファクターとなるはずなのに、その調査を行っていないのであれば「貸金契約」に近いのではないか、という主張です。
 
A社は2社間ファクタリングを希望していない
本件ファクタリング契約は、A社に債権回収事務を任せる「2社間ファクタリング」です。ただ契約締結時においてA社がこれを望んだわけではなく、当然のように債権譲渡契約書と事務委任の業務委託契約書に署名押印を求められ、自然な流れで契約が締結された、と主張しました。
つまりA社は2社間ファクタリングを希望していないのに、当社の都合で2社間ファクタリングが選択された、という主張です。
 
契約内容からしてPMG社は債権未回収の危険を負わない
A社は以下のように主張して、当社が債権未回収の危険を負っていないとしました。本件ファクタリング契約において、A社はPMG社に対し「第三債務者に支払拒絶する事情がないこと、信用力の問題がないこと」を保証し、またA社が債権を二重譲渡することも禁じられていました。
こういった事情からすると「将来取引先から抗弁を主張されるなどして回収不能となれば、PMG社は契約を解除してA社へ損害賠償請求ができることになる」という理屈を展開。PMG社は債権未回収のリスクを負っていないので、本件ファクタリング契約は「貸金契約と認定すべき」と主張しました。
 
買戻特約について
本件において、債権が未回収となって当社がA社の売掛先に直接督促すると、A社がファクタリングを利用した事実を取引先に知られて信用毀損リスクが発生します。
今後の取引に支障が及ぶのを避けるには、A社としてはなんとしても(他から資金を捻出してでも)PMG社へ支払いをせざるを得ない、そこで本件では「事実上の買戻し義務がある」と主張しました。
 
A社の経営状況が悪化する
本件ファクタリングのように、ファクタリング会社が高額な手数料を徴収するビジネスが合法的に通用するのであれば、A社のような中小企業の経営状況が確実に悪化してしまう、このような不当な状況を阻止するためにもPMG社のような暴利をむさぼるファクタリング業者を厳しく取り締まらねばならない、と主張しました。
 
裁判例について
当社が提出したファクタリング会社が勝訴した裁判例については「本件と事情が異なる」と主張するとともに、ファクタリング会社が敗訴した裁判例を持ち出し、「本件においてもファクタリング契約は貸金契約に該当する」と主張しました。
 
当社が和解を拒絶
その後、裁判所は両当事者に対し「このままではA社の主張を認めるわけにはいかない、請求を棄却する見込みである」という心証が開示されました。つまり「訴訟を進めて判決を下すと、PMG社が勝訴する可能性が高い」ということです。
「判決前に一度話し合いをしてはどうか」という裁判所からの勧告もあり和解協議が行われました。そこでは当社がA社へ「10万円」を支払って和解する内容が提示されました。
 
結論として、当社は和解案を拒絶しました。
当社がA社や代理人弁護士による不当な請求に対して「少額でも和解金を支払った」という前例を作らないためです。

実はA社の代理人に就任している弁護士は、事業者支援団体などから事件の紹介を受けているらしき気配があります。 そういった組織は相談してきた事業者に対し「ファクタリングを利用したならお金を取り戻せる可能性があるので、訴訟を起こすと良い」とアドバイスを行い、原告代理人弁護士を紹介しているようです。
こういった事情を背景に、本来なら認められないようなファクタリング会社相手の訴訟が近年数多く発生しているのではないかと考えられます。
もしも当社がここで和解に応じてしまったら、上記のような団体や原告代理人弁護士のような方がさらに多くの中小事業者に声をかけて無益な訴訟を起こさせ、中小事業者の利益が害されてしまうおそれが懸念されるでしょう。
 
そういった前例を作らないため、当社はたとえ少額であっても和解金の支払いを拒否しました。
 
本件は判決に持ち越されることとなりました。

  3. 判決の内容
令和3年5月27日、東京地方裁判所は判決を下し、以下のように判断しました。
 
結論
結論として裁判所はA社による主張を全面的に棄却し、一切の請求が認められませんでした。
事前の心証開示のとおり、当社の全面勝訴となりました。
 
理由は以下の通りです。
A社が債権全額の支払いを保証したとはいえない
本件ファクタリング契約において、A社は「契約において支払いの保証をさせられたので、未回収が発生したらA社が自己資金で填補しなければならない」といった主張をしています。しかし本件の契約書を見ても、そのような保証義務を定める条項はありません。
むしろ本件ファクタリング契約書には
「売主(A社)が買主(当社)に対し、現在及び将来にわたる第三債務者の資力を担保するものではない」
「債権の完全な履行を保証するものではない」
「債権の全部または一部が履行不能となった場合でも買主は売主に売買代金の返還を求めることはできない」
と明確に定められています。
つまり債権が回収不能となったときには買主である当社がリスクを被る内容となっているのです。
このことからすると「A社がPMG社へ債権全額の支払いを約束(保証)した」というA社の主張に理由はないと判断されました。
 
2社間ファクタリングも債権譲渡契約として有効
本件では、債権譲渡契約と同時に債権回収に関する業務委託契約が締結され、当社ではなくA社が債権回収を行う内容(いわゆる2社間ファクタリング)となっていました。A社はこのことを理由に「本件ファクタリング契約は貸金契約に性質が近い」と主張していましたが、裁判所は「債権回収に関する業務委託契約が締結されているとしても、契約の性質が債権譲渡契約であることに影響しない」としてA社の主張を排斥しました。
譲渡禁止特約がついていない保証について
本件ファクタリング契約において、A社は「売買対象債権に譲渡禁止特約はついていない」と保証していました。これについても通常の売買契約における商品の品質保証と何ら変わる点はなく、金銭消費貸借契約に該当する理由にはならないと判断されました。
 
買戻し義務は設定されていない
A社は、本件ファクタリング契約ではA社に実質的な買戻し義務があったという主張をしていました。
裁判所は以下のように判示し、A社の買い戻し義務を明確に否定しました。
■ 契約書において買戻義務は規定されていない
■ 債権が回収不能となったときにPMG社はA社へ売買代金の返還を求めることはできない、とはっきり規定されている

  買戻し特約がついていないならば本件は「ノンリコース型のファクタリング契約」であり、債権譲渡契約としての性質が認められることになります。
 
その他の原告の主張も認められない
A社は上記以外にも
「債権の一部譲渡が行われたので貸金契約である」
「2社間ファクタリングはA社が望んだものではない」
など、諸々の主張を行っていましたが、裁判所はすべて否定しました。
「原告(A社)はさまざまな主張を行っているものの、いずれも上記認定を覆すものではなく採用できない」と明確に判示しています。
以上より、裁判所はA社による当社への不当利得返還請求を全面的に排斥し、請求を棄却しました。
本件判決から学べること
本件判決はファクタリング利用会社によるファクタリング会社への「不当利息返還請求(過払い金請求)」を全面的に棄却するものです。実は今、東京を中心にA社のようなファクタリング利用会社からファクタリング会社へ対する不当利得返還請求訴訟(過払い金請求訴訟)が数多く提起されています。
一つには、上記にも記載したように事業者支援団体や一定の弁護士が中小事業者へ
「ファクタリングを利用した場合にはお金を取り戻せる」などとアドバイスを行っている事情があるためです。
 
しかしファクタリングを利用したからといって過払い金が発生するわけではありません。
「ノンリコース型」のファクタリング契約の場合には、訴訟を起こしてもほとんどの場合に請求棄却されてしまいます。2社間ファクタリングであっても貸金契約になるとは限らないので、誤解しないように注意しましょう。
 
無益な訴訟を起こせば弁護士費用も労力も時間も、すべてが無駄になってしまいます。
中小事業者が弁護士や事業者支援団体によってファクタリング会社に対する訴訟提起を勧められたときには、不当な不利益を受けないようくれぐれも慎重に判断してください。
 
弁護士の先生方におかれましても「ファクタリング契約は悪、ファクタリングが行われたら過払い金請求できる」というのは誤解ですので、本件判決をご覧になって正しい理解を得ていただけますと幸いです。
平31(ワ)7026号 損害賠償等請求事件(本訴)
1 事案
 本件は、客が売掛債権早期資金化業者に対し、二者間売掛債権早期資金化が債権譲渡担保付き金銭消費貸借契約であることから、貸金業法違反(無登録の貸金業である)及び出資法違反(上限利率を大幅に超える)により公序良俗に反して無効並びに貸金業法42条1項により無効であるとして不当利得返還請求を、また、貸金業者として取引履歴を開示しなかったことなどが不法行為に当たるとして慰謝料の請求をしたところ、これらは認められず、逆に、売掛債権早期資金化業者から取立金の引渡しと遅延損害金の支払いを求められ、これが認められた事案である。
2 争点に対する判断
⑴ 二者間売掛債権早期資金化は債権譲渡担保付き金銭消費貸借契約ではなく債権の売買契約である
客の主張する、公序良俗違反(貸金業法違反及び出資法違反)、貸金業法42条1項による契約無効、及び貸金業者として取引履歴開示義務は、いずれも二者間売掛債権早期資金化が「債権譲渡担保付き金銭消費貸借契約」であることが前提となっており、また、売掛債権早期資金化業者の客に対する反訴請求も本件の取引が債権の売買契約であることに基づくため、この点が争点として判断された。
⑵ 担保目的の推認との関係で考慮された観点(①二者間売掛債権早期資金化の構造的リスクの買取率への影響、②平成18年最高裁判決との比較、③債権額の7~8割程度の代金額)
担保目的の推認との関係では、①法形式の選択、②対抗要件の具備の猶予、③代金額が債権額の7~8割程度、という観点が考慮されている。
①については、債権の譲渡が担保目的でないことが明記されていること、第三債務者に着目した審査基準を元に買取価格が決定されていること、売掛債権早期資金化業者が客に対する償還請求権を有していないこと、買戻しが予定されていないことなどを挙げ、当事者があえて債権の売買契約という法形式を選択しており、実質的にも、譲渡債権に関する債務不履行リスクが客から売掛債権早期資金化業者に移転していると評価されている。この点、本件では、二者間売掛債権早期資金化の構造的リスク(客に取立てを委任することに伴うリスク)が「一般的に」買取率に影響しうるとしても、客「固有」の信用リスクを考慮していたとは認められないとして、かえって、債権の審査基準は専ら第三債務者に関する信用リスクのみを考慮されていたことが挙げられていることが特筆に値する。
②については、上記猶予はいつでも撤回することができ、実際に債権譲渡通知書の作成等の債権譲渡通知の準備がなされており、売掛債権早期資金化業者の判断において通知可能であったことから、その債権譲渡についての権利行使が制限されていたということもできない、と認定されている。そして、本判例の最も特筆すべき点として、平成18年最高裁判決(買戻特約付売買契約の形式を採りながら目的不動産の占有の移転を伴わない契約については、特段の事情がない限り債権担保の目的が推認される)との比較において、(債務者)対抗要件の具備の猶予が担保目的であることを推認する事情かどうかについて、裁判所は、「法があえて債権譲渡登記制度を設けて第三者対抗要件のみを具備することを可能としたことからすれば,債権の真正売買を前提としても,債権譲渡通知・承諾が猶予されて原債権者が債権の回収を行うことは想定されている」として、同事情が担保目的を推認しないと判断した。
③については、売掛債権早期資金化業者が「第三債務者の無資力のリスクを負っているにも関わらず,第三債務者に対する債権譲渡通知を留保する関係上,第三債務者に対する直接の信用調査が困難であることに照らすと,その差額は担保目的を推認させるような大幅なものということはできない。」として、概ね債権額面の7割から8割程度の売買代金を許容している。
3 講評
⑴ 本件は、公序良俗違反(貸金業法違反及び出資法違反)、貸金業法42条1項による契約無効、及び貸金業者として取引履歴開示義務といった「貸金業法違反」がメインに争われているが、その実質は、二者間売掛債権早期資金化が「債権譲渡担保付き金銭消費貸借契約」であるかどうについて、「担保目的の推認」という観点から判断されている判例です。
⑵ 上記観点①では、二者間売掛債権早期資金化の構造的リスク(顧客に取立てを委任することに伴うリスク)が「一般的に」買取率に影響しうるとしても、顧客「固有」の信用リスクを考慮していたとは認められないとされており、買取率については、顧客の個別の事情を考慮していなかったという点で、むしろ「一律」の方がよいという解釈もできます。
⑶ 上記観点②では、平成18年最高裁判決(買戻特約付売買契約の形式を採りながら目的不動産の占有の移転を伴わない契約については、特段の事情がない限り債権担保の目的が推認される)との比較がされており、その中で、法が「債権譲渡通知・承諾が猶予されて原債権者が債権の回収を行うことは想定」しているとして、二者間売掛債権早期資金化を明確に肯定しています。
⑷ 上記観点③では、債権額の7~8割程度の代金額が許容されています。この程度の買取率が、二者間売掛債権早期資金化の実務において定着したものと言えるでしょう。
平27(ワ)24861号 不当利得返還請求事件
1 事案
 本件は、客が売掛債権早期資金化業者に対し、二者間売掛債権早期資金化が①金銭消費貸借であるとして、利息制限法を適用して過払金の返還を、また、②公序良俗(暴利行為)又は譲渡禁止特約に反して無効であるとして、不当利得の返還を求めた事案である。
 客は、一審、二審、ともに敗訴し、最高裁へ上告までしたが、上告は棄却され、売掛債権早期資金化業者の勝訴判決が確定した。 2 争点に対する判断
⑴ 二者間売掛債権早期資金化は債権の売買たる実質を有し利息制限法が適用されるものではない
一審、二審、通して主として検討されたのは、債権回収の危険を客が負担していたかどうかであるところ、裁判所は、売買の目的である債権の記載と「代金額」の記載という売買契約の要件を満たした契約書と、これに基づく代金の支払いを前提に、㈠「代金額」が「契約日」から「支払日」までの期間の長短と対応していないこと、㈡債権の存在や内容の確認、第三債務者の与信調査が行われていたこと、㈢債権譲渡通知書が作成されて売掛債権早期資金化業者に交付されていたこと、を挙げて、本件の取引が売買契約の実質を有していると認定した。
 さらに、二審では、㈣債権譲渡通知がされていないこと(二者間売掛債権早期資金化であること)、㈤契約書上、客が表明保証などをしていることも争われたが、前者については、取引先である第三債務者に知られないように客から債権譲渡通知を行わないよう依頼があったこと、後者については、その表明保証は債権の実在性や債務不履行などに関するものであり、第三債務者の無資力ないし任意の不払いの危険を客に負担させたものではないと判断された。
⑵ 代金額が買取債権額の77~78%では暴利行為に当たらない
裁判所は、代金額が買取債権額の77~78%では暴利行為に当たらないと判断した。なお、二審では、客が第三債務者からの回収不能等の危険を負担しているものでなければ、売掛債権早期資金化業者が回収不能等の場合に客に対し償還を求める権利を有しているものではないとして、この代金額が「等価交換の理念に大幅に違反した暴利と認めることはできない」としている。さらに、契約日から債権の支払日までが短く、第三債務者に信用力があること、売掛債権早期資金化業者が客の窮状を認識していたといった事情は、本件の取引が売買契約であることを前提とすると、暴利行為として公序良俗に反することの根拠にできないとされている。
⑶ 二者間売掛債権早期資金化においても客は譲渡禁止特約による無効主張をする独自の利益を有しない
裁判所は、譲渡禁止特約による無効主張については、最高裁平成21年3月27日判決に従い、同特約に反して債権を譲渡した客にその無効主張をする独自の利益がないと判断した。なお、第三債務者に譲渡の無効を主張する意思があることがあるなどの特段の事情がある場合には、その独自の利益があることになるが、二者間売掛債権早期資金化では、第三債務者は客に対して支払えばよいのであるから、債権譲渡の無効を主張する必要性もない、と判断されている。
3 講評
⑴ 本件は、二者間売掛債権早期資金化でよく主張される、⑴金銭消費貸借であるから利息制限法を適用して過払金が発生している、⑵暴利行為であるから公序良俗に反する、⑶譲渡禁止特約に反して無効である、という典型的な争点について上級審まで争われた事案でしたが、上告が棄却され、一審、二審を通して認められた二者間売掛債権早期資金化の合法性が最高裁においても是認された結論にいたりました。
⑵ 上記争点⑴については、売買契約の要件事実(売買の目的と代金の定めがあること)論から入り、㈡第三債務者の与信調査といった、他の判例でも挙げられる事情に加え、㈠「代金額」が「契約日」から「支払日」までの期間の長短と対応していないことや、㈢債権譲渡通知書が作成されて売掛債権早期資金化業者に交付されていたことも挙げられていることは興味深いポイントです。前者については、「代金額」が「契約日」から「支払日」までの期間の長短と対応しているとなると、それは実質的に「利息」の計算をしていたことになり、後者については、債権譲渡通知書が作成されて売掛債権早期資金化業者に交付されていたことは、正に債権譲渡として三者間売掛債権早期資金化に移行する可能性があったことを評価しているものと思われます。
 さらに、控訴審では、㈣債権譲渡通知がされていないことについて、取引先である第三債務者に知られたくないという顧客のニーズとこれに伴う債権譲渡通知を行わないでほしいという顧客の依頼があったことを認定し、二者間売掛債権早期資金化の必要性が肯定されており、また、㈤契約書上、顧客が表明保証などをしていることについて、その表明保証が債権の実在性や債務不履行などに関するものに限定されていたことも見過ごせない点と言えるでしょう。 ⑶ 上記争点⑵については、二者間売掛債権早期資金化において、20%前後の手数料では違法ではないという実務が確立していると捉えることができます。
⑷ 上記争点⑶については、二者間売掛債権早期資金化においても最高裁平成21年3月27日判決を踏襲し、その射程が及ぶことについて、上告が棄却されて最高裁において是認されていることから、この点についての判例は確立した言えます。
平29(ワ)7263号・平29(ワ)21998号 供託金還付請求権確認請求事件
1 事案
 本件は、二者間売掛債権早期資金化において、売掛債権早期資金化業者、客の破産管財人、租税滞納で差し押さえた国、及び二重譲渡先が四つ巴で供託金について争った事案である。
2 争点に対する判断
⑴ 二者間売掛債権早期資金化は合法
 争点は多岐にわたるが、裁判所は、まず、二者間売掛債権早期資金化について、「実質的に金銭貸付けと同視し得るとまではいえず」、「公序良俗に違反し無効であるとは認められない。」として、合法の判断をしている(「債権譲渡において,債権の額面金額と債権の売買代金額が一致しないことは当然」とする売掛債権早期資金化業者の主張を認め、他方、破産管財人の「高利」であるという主張は、そもそも実質的に金銭の貸付けに当たらないことから排斥している。)。
⑵ 二者間売掛債権早期資金化の特徴を挙げて売掛債権早期資金化業者に譲渡禁止特約の有無につき「重過失」はなかったと判断
 次に、裁判所は、本件で二者間売掛債権早期資金化の対象となった債権には譲渡禁止特約が付されていたところ、「譲渡禁止の特約に反して債権を譲渡した債権者は,同特約の存在を理由に譲渡の無効を主張する独自の利益を有しないから,特段の事情がない限り,その無効を主張することは許されない」とする平成21年の最高裁判例に依拠し、「譲渡禁止の特約に反して債権を譲渡した債権者」である客にはその無効主張適格がないものの、差押債権者である国とこれに類似する法律上の地位にある破産管財人には「独自の利益を有する」としてその無効主張適格を肯定した。
 しかし、裁判所は、売掛債権早期資金化業者には譲渡禁止特約の有無について重過失はなかったとして、結論として国と破産管財人の主張を排斥している。ここで、裁判所は、二者間売掛債権早期資金化の特徴として、取引先に債権譲渡の事実を知られると信用の低下につながるため、取引先に知られずに債権譲渡による資金調達を行うことを目的としているのであるから、取引先に対し、譲渡禁止特約の有無を確認しなければならないとすると、契約の目的が達成できなくなるおそれがあることを理由の一つとして挙げている。
 なお、裁判所は、売掛債権早期資金化業者ではない二重譲渡先については、重過失を認めている。
⑶ 「平成28年10月1日から同年11月30日までの間に」という幅のある記載では譲渡対象債権が特定されていない
 本件で最も特筆すべきところは、譲渡対象債権の特定についての判断である。
 本件では、譲渡対象債権は、「平成28年10月1日から同年11月30日までの間に」客が第三債務者から支払を受ける○○債権の内金○○円という形で記載されており、10月支払分債権と11月支払分債権が含まれていた。
 裁判所は、このような記載では「譲渡対象債権が特定されているとはいい難い」として、「契約締結の時点では,当然には債権譲渡の効力は生じず,仮にその時点で譲渡通知が行われていたとしても,対抗要件を具備しないものと解すべき」とした上で、第三債務者から客に10月支払分債権について支払いがされ、客がこれを売掛債権早期資金化業者に支払っていないことから、11月支払分債権に事後的に特定されたと判断し、結論として、売掛債権早期資金化業者の供託金還付請求権を全面的に認めた。
3 講評
 二者間売掛債権早期資金化の合法性については、東京高等裁判所平成29年5月23日判決が積極的に判断しており、実務的にはこの評価が定着していること裏付ける判例です。
 譲渡禁止特約による債権譲渡の無効主張適格については、破産管財人につき下級審において判断が分かれており、本判例では積極的な判断がなされていますが、二者間売掛債権早期資金化の特徴を挙げて売掛債権早期資金化会社に「重過失」はなかったとは判断したことは重要な意義を有するものと考えます。
 他方、譲渡対象債権について「平成28年10月1日から同年11月30日までの間に」というような幅のある記載では、債権の特定性について消極に解されています(事後的に特定することはあるとの判断です)。
平30(ワ)32345号 不当利得返還請求事件
1 事案
 本件は、破産管財人が二者間売掛債権早期資金化を実質的に金銭消費貸借契約に当たるとして、利息制限法の適用又は類推適用により過払金の支払いを求めた事案である。
2 争点に対する判断
⑴ 二者間売掛債権早期資金化は実質的にも金銭消費貸借には当たらない
 主たる争点は、二者間売掛債権早期資金化が実質的に金銭消費貸借契約に当たり、利息制限法の適用又は類推適用を受けるかどうか、であるが、裁判所は、以下の3点を積極的な理由として挙げて、破産管財人の請求を棄却する判断を下した。
⑵ いわゆる「ノンリコース型」の契約書であったこと
 裁判所は、本件の売掛債権早期資金化業者の契約書の記載を指摘し、次のように判示している。
「債務者の不払による回収不能の危険は被告が負っていると認められるから,本件各取引は,借主が,債権の回収(弁済原資の調達)の可否にかかわらず借入額と同額について返還義務を負う金銭消費貸借とは性質が異なっており,債権譲渡であることを裏付けている」
 これは、売掛債権早期資金化業者が主張していた、いわゆる「ノンリコース型」(債務者による債務不履行があった場合でも,買主が売主に対して買戻請求その他の責任追及をできない構造)の売掛債権早期資金化取引であることを認めたものである。
⑶ 「二者間」の形式を採っていることは実質的に金銭消費貸借であったと認めるべき特段の事情に当たらないこと
 裁判所は、「二者間」売掛債権早期資金化、すなわち、第三債務者に対して債権譲渡通知をせず、客に債権回収業務を委託していることについて、次のように判示している。
 「債務者に対して債権譲渡通知をせず,アライバル及び近江機電が債権回収を行っていたことについては,取引先である債務者らに債権譲渡の事実が知られることによって,アライバル及び近江機電の経済的信用が低下することを防ぐための措置と解することができ,これをもって,本件各取引が実質的には金銭消費貸借であったと認めるべき特段の事情に当たるとはいえない。」
 これは、客において取引先に債権譲渡通知をされることなく資金調達をしたいという実務的なニーズがあることを認めたものと評価できる。
⑷ 債権の一部だけを買い取っていることは第三債務者の不払いのリスクを考慮してのものであること
 裁判所は、次のように判示して、債権の一部だけを買い取っていることを積極に理解している。
「本件各取引において,債務者の不払による回収不能の危険は被告が負っているところ,原告らが指摘する諸点のうち,被告が原告及びアライバルの有する債権の一部(一定の金額分)のみ買取対象としていたこと(甲9,弁論の全趣旨)は,むしろ,債権買取の可否を検討するに当たり,被告が上記危険を負担することが考慮された結果であると考えられ,そうであれば,譲渡代金額の決定に当たっても,上記危険が考慮要素になっていたことが推認される。」
3 講評
 二者間売掛債権早期資金化の合法性については、公序良俗に反するか、という段階と、利息制限法により過払請求が認められるか、という段階と、2段階に分かれるところ、ハードルの高い前者については認められた判例は皆無ですが、後者については、「金銭消費貸借に準ずる」としてこれを唯一認めた平成29年3月3日付けの大阪地裁の判例があります。しかし、同判例は、代金の一部しか渡していなかったという特殊事情があり、そのような特殊事情のない事案では、東京高等裁判所平成29年5月23日判決と同様に、「ノンリコース型」や「二者間」であることについて積極的に判断して後者についても合法であると判断される傾向があります。本判例もこの流れを踏襲しており、実務的に二者間売掛債権早期資金化が合法であるという評価が定着していること裏付ける判例と言えます。
 本判例で特筆すべきところは、債権の一部だけを買い取っていることを積極に理解している点です。これは、第三債務者の不払による回収不能の危険を売掛債権早期資金化業者が負っているという「ノンリコース型」の契約であることを前提とするものですが、「ノンリコース型」の契約かどうかについては、本判例では契約書の記載から判断されています。
平30(ワ)17313号 代理受領金支払請求事件
1 事案
 本件は、二者間売掛債権早期資金化において、売掛債権早期資金化業者が原告となり、集金額を支払わない客を被告として訴えた事案であり、これに対し、客は、二者間ファクタリグが違法な暴利行為に該当する金銭消費貸借取引であり、公序良俗に反し無効であると反論して争った。
2 争点に対する判断
⑴ 回収リスクを客が負担していたとは認めらない
 客は、売掛債権早期資金化業者に譲り渡した債権につき、その債権譲渡後も、回収リスクは依然として客が負担していたので、二者間ファクタリグは実質的に金銭消費貸借契約であると主張した。  しかし、裁判所は、「本件両契約には,被告が第三債務者である日本ファブテックないし大成建設からの集金ができなかった場合にまで,被告自身の資金により原告らに対する支払をなすべき義務を定めたと解しうる約定はなく,また,被告に本件両債権の買戻しを強制するような約定もないことが認められるところであり,本件両債権の回収リスクを被告が負担していた旨の被告の主張は採用することができない。」と判示し、客の当該主張を採用しなかった。
⑵ 集金業務委託は債権譲渡契約と両立する  客は、第三債務者からの集金義務が客に課されていたことからも、二者間ファクタリグの実質は金銭消費貸借契約であると主張した。
しかし、裁判所は、「集金業務を債権譲渡人に委託することで,第三債務者に債権譲渡の事実を知られないようにすることは,債権譲渡契約と相容れないものではない」と判示し、客の当該主張を失当であるとした。
⑶ 2割程度の割引率での買取りでは暴利行為に当たらない
 裁判所は、「回収予定額と代金額の差額を利息と見た場合にはその利率が年304%及び年745%にも相当するものであることは被告指摘のとおりである」としつつも、「集金業務を被告が行うことが併せて約定されており,集金後の原告らへの回収にリスクを伴う取引であったことを考慮すると,2割程度の割引率での買取りが暴利行為に当たるものとは必ずしもいえない」と判示し、そのほかに本件の二者間ファクタリグが公序良俗に反するものと評価する事情もないとして、客の主張を排斥した。
3 講評
 二者間売掛債権早期資金化の合法性が争われる場合、主として、⑴「回収リスク」を誰が負うのか、⑵「二者間」の形式を採ることが脱法的か、⑶手数料が暴利か、という点が問題となるところ、本判例は、正にこれらについて正面から答えたものです。
 上記⑴に関しては、第三債務者から回収できなかった場合に客にその回収リスクを負担させる構造になっていたかが重視されますが、その一つのメルクマールとして「買戻しの規定」の有無が挙げられます。本件でも同規定がなかったことが判示されていますが、二者間ファクタリグの合法性を認めた先例である東京高等裁判所平成29年5月23日判決においてもこの点が挙げられているので、まだそのような規定が入っている契約書を使用している売掛債権早期資金化事業会社は危険であるとも言うことができます。
 上記⑵に関しては、集金業務の委託については、取引先(第三債務者)に売掛債権早期資金化を利用していることを知られたくないという中小企業のお客様のニーズがあることは間違いありません。「二者間」にすることにつき顧客からの願い出があることは明らかになっていることが重要なポイントとなりました。
 上記⑶に関しては、上記⑵のとおり「二者間」とすることのニーズがあり、その反面、第三債務者から集金した顧客が使い込みをするリスクがあることから、「2割程度」の手数料も実務的に許容されていることを明示した判例であり、この点において先例として意義を有するものと言えます。
平30(ワ)13432号 過払金返還請求事件
1 事案  本件は、主位的に、二者間売掛債権早期資金化を実質的に金銭消費貸借契約に当たるとして過払請求を、予備的に、暴利行為であるとして不当利得又は不法行為に基づく請求を、それぞれ利息制限法所定の制限利率を超える部分につき求めた事案である。


2 争点に対する判断
⑴ 二者間売掛債権早期資金化は利息制限法1条の「金銭を目的とする消費貸借」とは明らかに法的性質を異にする取引である
 主位的請求に関して、本件の二者間の売掛債権早期資金化では基本契約と個別契約の形式を採っていたが、裁判所は、基本契約において「原告が被告に対して原告の有する債権を売却する取引を行うこととしてその一般的な条件を定めている」こと、実際にもその基本契約に従って個別契約が締結され、「原告と被告との間で対象債権を特定した上,売買代金額を合意して取引がされている」と認定して、「本件取引は,原告の有する売掛債権を被告に売買する債権譲渡取引であることが明らかであって,利息制限法1条の「金銭を目的とする消費貸借」とは明らかにその法的性質を異にする取引」と判断した上で、次の⑵ないし⑷のとおり、原告である客の主張を排斥した。
⑵ 第三債務者の信用状況について審査をしていたこと
 裁判所は、「本件基本契約において,原告は,被告に対し,本件債務者に関する資料及び情報,原告と本件債務者との過去の取引の状況の分かる資料及び情報の提供義務を負っていること(1条2項①及び②),被告は,平成29年2月10日,本件取引を開始するに当たって原告に対し,原告自身の財務状況等を示す資料とともに,本件債務者に対する直近の売上集計や今後2か月の売上見込み,月別の入金実績等の資料を持参するよう求めていたことが認められ,そうすると被告が本件債務者の信用状況について全く審査等を行わないまま本件取引を開始したものとはいい難い。」と判示し、客の信用状況のみを判断しているという原告の主張を排斥した。
⑶ 客が売掛債権早期資金化業者に支払っていた金銭は第三債務者から振り込まれた金銭であること
 裁判所は、「二者間」売掛債権早期資金化、すなわち、売掛債権早期資金化業者が客に対して譲渡に係る債権の回収事務を委託していたことについて、「上記原告が被告に対して振り込んで支払っていた金銭は,振込当日に本件債務者から原告に対して振り込まれた金銭であることが認められ,そうすると,上記金銭のやり取りから直ちに,原告及び被告間でのみ貸付けと返済が行われていたと評価することは困難であって,むしろ,原告が,被告から委託を受けた譲渡の対象債権の回収事務を遂行して回収された金銭を被告に支払っていたものと見るほかない」と判示し、金銭のやり取りが客と売掛債権早期資金化業者との間でのみされているという原告の主張を排斥した。
⑷ 売掛債権早期資金化業者が第三債務者からの回収リスクを負っていたこと
 裁判所は、「本件基本契約は,本件個別契約の締結後は,被告において本件個別契約に係る債権を債務者から回収するものとし,本件個別契約に係る債権の全部又は一部が債務者の債務不履行,支払不能又は支払停止により取立不能とされる場合においても,原告が本件基本契約に違反した場合を除き,原告は被告に対して何らの責任を負わない旨定めている」と認定し、「本件取引において,譲渡に係る債権の回収リスクを原告のみが負っているということは困難というほかない」と判示して、債権の回収リスクを客のみが負っているという原告の主張を排斥した。
 なお、裁判所は、「もともと上記回収業務の委託は,原告が債権譲渡通知が被告から債務者にされることを希望しなかったことに配慮して合意されたものである」と認定して、「二者間」売掛債権早期資金化の形式を採っていることについても客にのみ譲渡に係る債権の回収リスクを負わせたとまでいうことは困難であるとし、また、基本契約の各規定を詳細に検討し、「上記各規定の内容は,いずれも本件個別契約に基づき譲渡された債権について,原告自身によるこれと矛盾する処分行為を禁止したり,本件債務者から抗弁をもって対抗された場合に備えたりするものと考えられ,上記各規定が,債権の譲渡人としての原告の法的責任をことさらに加重しているとか,被告に不必要なほどに広範な解除事由を定め,更に解除された場合の原告の義務を不必要に拡張するなどして被告が回収リスクを負わないように仕組んでいるということは困難」であるとも判示している。
⑸ 暴利行為に当たらないこと
 予備的請求に関しても、裁判所は、「本件個別契約における各譲渡代金額が,譲渡に係る債権額に比して著しく低額であるともいい難い」ことなどの認定をし、暴利行為であるという原告の主張を排斥した。 なお、裁判所は、「被告からの入金額をもってその前の本件個別契約に係る債権額の支払に充てられていたこともあり得ると考えられるけれども」という可能性も考慮しつつ、「本件債務者からの入金のうち譲渡された債権額を被告に振込をしたその日に被告からの振込がされていた」という認定もしている。


3 講評
 二者間売掛債権早期資金化の合法性については、公序良俗に反するか、という段階と、利息制限法により過払請求が認められるか、という段階と、2段階に分かれるところ、本件は、よりハードルが低いと考えられる後者について集中的に争われた事案でしたが、それでも裁判所は二者間売掛債権早期資金化が合法であることに軍配を上げました。
 その判断の根底にあるのは、上記2の⑵ないし⑷に挙げられている「ノンリコース型」の考え方です。つまり、貸金(金銭消費貸借)というためには、顧客がその責任財産をもって返済しているという事情が重要であるところ、買い取った債権の限りで回収している二者間売掛債権早期資金化では何を引当てにしているかという点において明らかに矛盾するのです。その際、本判例において争点となっている、「第三債務者」の信用状況の審査(同⑵)、「第三債務者」から振り込まれた金銭で支払いがされていたこと(同⑶)、「第三債務者」からの回収リスクを負っていること(同⑷)、という、顧客ではなくあくまで「第三債務者」の責任財産に目を向けていたことが評価のポイントとなりました。
 上記の「ノンリコース型」の考え方を重視する本判例も、これと同様の視点を持つ東京高等裁判所平成29年5月23日判決の流れを汲むものであり、二者間ファクタリグが利息制限法1条の「金銭を目的とする消費貸借」に当たらないことを明言した点でも重要な意義を有する判例となりました。