裁判事例

正しい

売掛債権早期資金化サービスを

広めるために。

裁判を通じて、売掛債権早期資金化サービス事業の
正しさ、適切な対応、責任の範囲が明確になっています。
下記事件を参考にしながらわたしたちはこれからも
適切で正当な売掛債権早期資金化サービス事業を展開してまいります。

令2年(ワ)第32419号 不当利得返還請求事件
事案の概要
本件は、PMG社と他のファクタリング会社(A社)に対し、原告(X社)が不当利得返還請求を行った裁判です。
X社はA社とPMG社の両社で複数回ファクタリングサービスを利用して資金調達しましたが、後に「ファクタリング契約は実質的に金銭消費貸借契約」と主張して「利息制限法を超過した手数料」について不当利得返還請求をしました。

確かに契約の性質が「金銭消費貸借契約」であれば「利息制限法」が適用されます。ファクタリングの手数料は制限利率を大きく超過するので、制限利息を超過して過払いとなった分の返還を求める趣旨です。

当社とA社は請求を拒否しました。

なお原告であるX社は土木建築用資材や建設機械リース業などを営む企業です。

原告…X社(ファクタリングを利用した企業)
被告…PMG社と他のファクタリング会社(A社)の合計2社


原告の主張
原告となったX社は以下のような主張を行い、当社とA社へ不当利得返還を求めました。請求理由はA社に対するものも当社に対するものもほとんど同じだったので、以下ではまとめて表記します。

ファクタリング会社は「回収リスク」を負担していない
ファクタリング契約の法的性質が債権譲渡契約となるか実質的に金銭消費貸借契約となるかは、通常「当事者のどちらが回収リスクを負っているか」で判断されます。回収リスクを譲受人であるファクタリング会社が負っていれば通常の債権譲渡契約ですが、回収リスクを譲渡会社が負っていれば実質的には金銭消費貸借契約と同じと評価されます。
X社は「回収不能リスクは自社が負担しており、ファクタリング会社らは負担していないから、本件契約は金銭消費貸借契約となる」と主張しました。
X社は債権譲渡通知が第三債務者へ発送されるのを阻止するため譲渡債権を買い戻さざるを得ない立場であった
本件のファクタリング契約において「買戻特約」はついていませんでした。
また契約締結時、第三債務者への債権譲渡通知は送られませんでした。ただし不払いが起こったときに備えていつでも通知を送れるよう、X社はファクタリング会社らへ「債権譲渡通知書」を預けていました。つまり第三債務者が不払いを起こしたときにはファクタリング会社が自ら債権譲渡の通知をするための準備を整えていたのです。

ところが実際に債権譲渡通知が第三債務者へ送られるとX社の信用が毀損されるので、万一不払いが発生するとX社としては事実上通知を阻止するために買い戻すしかありません。X社としては「事実上は買戻特約がついていたのと同じ」といえるから、本件ファクタリング契約は金銭消費貸借契約であると主張しました。

ファクタリング会社との契約では「表明保証違反があれば契約を解除できる」と書かれており、回収不能リスクはX社が負っていた
当社やA社のファクタリング契約書では、X社における「表明保証条項」がもうけられていました。表明保証とは、契約時に第三債務者において不払いや倒産リスクがみあたらないことや、X社による告知内容に虚偽がないことなどについて保証するための条項です。そして保証内容に虚偽があった場合にはファクタリング会社から契約を解除できる内容となっていました。
X社は「第三債務者の状態について表明保証を行い、違反があれば解除されるのだから、回収できなかった場合にも解除される可能性がある。よって不払いリスクはX社が負っていた」と主張しました。
債権回収がX社に委託されていた
本件ファクタリング契約では、いずれも第三債務者からの債権回収はX社に委託されていました。債権譲渡契約と同時に「取立事務委任契約」が締結されていたのです。

ファクタリング会社が直接第三債務者へ取り立てを行うと、X社が「ファクタリングで資金調達をした」事実を知られてしまい、信用が毀損されるおそれがあります。そこでX社の要望により、取り立てはX社が行って後にA社や当社へ支払う2社間ファクタリングの形式をとりました。
X社は「取り立て事務が自社に委託されていたことも債権譲渡契約といえない一事情になる」と主張しました。

A社は債権の調査をしていない
A社はX社と6回取引をしていますが、その都度譲渡債権についての詳しい調査をしていなかったようです。債権譲渡契約であれば売買対象物である譲渡債権について調査されるはずなので、「調査されていないということは契約が金銭消費貸借契約であった根拠になる」と主張しました。

PMG社の反論
当社は上記X社の主張に対し、以下のように反論しました。
引当は回収した債権のみであった
まずは「当社債権の引当は第三債務者からの回収金のみであり、X社の財産全般には及ばない」点を強調しました。
もしも金銭消費貸借契約であれば、第三債務者から不払いがあったとき、当社はX社の財産全般から取り立てができるはずです。
しかし本件ファクタリング契約では、第三債務者が不払いを起こしたときに買い戻し請求などができないので、結局引当となるのは「回収できた債権」のみとなります。
このように「引当となる財産は回収に成功した債権のみでありX社の財産一般には及ばない」のであれば契約の法的性質は債権譲渡契約に他ならない、と主張しました。

買戻しを行わざるを得ない立場ではない
X社は「第三債務者が不払いを起こしたら事実上、買戻しをせざるを得ない立場であった」と主張しましたが、当社は否定しました。
本件ファクタリング契約において、X社は「回収できた限度で当社へ支払いをすれば義務を免れる立場」であり、X社の倒産や不払い、遅延などの事情についての責任は負いません。
リスクが生じたときに買戻しをすべき義務は存在しないのは明白と主張しました。

表明保証違反があれば解除されるのは当然
X社は「譲渡債権に抗弁事由等の具体的な危険が発生していないこと」などについて表明保証を行い、それに虚偽があった場合などには解除される可能性があることを「金銭消費貸借契約である」根拠にしていました。
しかし「譲渡時に譲渡債権に倒産や抗弁事由などの危険が発生していないこと」を表明保証させるのは取引において合理的な対応であり、不当な要求ではありません。
またあえて虚偽報告するなどの表明保証違反があれば、契約を解除されても当然です。
よって「表明保証違反で解除されるからといって金銭消費貸借契約とはいえない」と反論しました。

取立事務を委託する2社間ファクタリングも債権譲渡として有効である
X社は「第三債務者からの取立事務をX社に委託するのは債権譲渡として不自然であり、金銭消費貸借契約である」という趣旨の主張をしましたが、当社はこれも否定しました。
そもそも、債権譲渡通知を送らずに取立事務を譲渡会社に委託する形でも債権譲渡契約は有効です。
また当社が直接回収せずにX社に取り立てを委任したのは「第三債務者にファクタリング利用を知られたくない」というX社のニーズに応じたものでした。
こういった事情にかんがみても取立事務委任契約の存在によって本件ファクタリングが金銭消費貸借契約になることはありえないと反論しました。

A社の反論
A社もおおむね当社と同様の反論を行いました。

裁判所の判断
裁判所は以下のように判断し、X社による請求を棄却しました。
契約書は債権譲渡の形式をとっている
そもそも本件で用いられたファクタリングの契約書には「債権の売買」と明記されており、債権の額面額や取引価額なども明らかにされていました。またPMG社との契約書では「本件取引は譲渡担保つきの金銭消費貸借契約ではない」とはっきり書かれていたので、両者ともに「債権譲渡契約」と認識していたはずです。

ファクタリング会社が不払いリスクを負っている
本件ファクタリング契約において、X社はいずれのファクタリング会社の間でも「不払いリスク」は負っていませんでした。
X社としては第三債務者から回収した限度で当社やA社へ支払いをすれば責任を免れるのであり、X社の財産全体が引当になるわけではありません。
よって契約の性質は特段の事情のない限り「債権譲渡契約に該当する」と判断されました。

X社が買い戻さざるを得ない立場であったとはいえない
X社は「第三債務者が不払いを起こしたときには信用を守るために買戻しをせざるを得ない立場であった」と主張しましたが、裁判所はこれを否定しました。契約内容において「第三債務者が払わないときにX社が買い戻すべき義務」は一切規定されておらず、回収した限度で支払いをすれば責任を免れるのだから買戻義務は存在しないと認定しました。

表明保証違反で解除されるのは当然である
X社は「表明保証違反で解除される可能性があるので不払いリスクをX社が負っていた」と主張しましたが、裁判所はこれも否定しました。
表明保証の内容は「契約締結時において譲渡債権に抗弁事由などの具体的な危険が発生していないこと」などの合理的なものです。また虚偽を述べるなどして義務に違反したときに契約を解除されるのは当然といえます。表明保証違反による解除の可能性をもって「金銭消費貸借契約とはいえない」と判断されました。
取立事務が委託されていても債権譲渡契約と評価できる
X社は「X社に取立事務が委託されていたから債権譲渡契約ではない」と主張しましたが、裁判所は取立事務委任契約があっても債権譲渡の性質に反するものではないと判断しました。
X社のその他の主張について
X社は「譲渡された債権が一部であったこと」、「譲渡債権の弁済期が契約締結時と近かったこと」、「A社によって第三債務者の調査が詳細に行われなかったこと」などの諸事情により「金銭消費貸借契約であった」と主張しましたが、裁判所は認めませんでした。
そういった諸事情があっても債権譲渡契約の性質を覆す「特段の事情」にはならないとして、最終的に本件ファクタリング契約は債権譲渡契約であると認定しました。

利息制限法の適用はない
PMG社とA社とのファクタリング契約がいずれも債権譲渡契約である以上、利息制限法の適用はありません。設定された手数料も債権譲渡(ファクタリング)として高額にすぎる不当なものともいえないので有効と判断されました。

よって利息制限法違反の過払い金は発生せず、X社の当社及びA社への請求は全面的に棄却されて裁判は集結しました。

講評
本件の原告となったX社は「ファクタリング契約が実質的に金銭消費貸借契約」と主張して利息制限法を適用し、過払い金を請求しています。
一般的にこの種の請求が認められるためには「譲渡会社が不払いリスクを負担」していなければなりません。具体的には不払いが生じたときに買戻しを行うべき法的義務が設定されているなどの特殊事情が必要です。
単に「ファクタリング会社から第三債務者へ通知されると信用が毀損されるから買い戻さざるを得ない」といった事実上の事情だけでは「買戻義務」といえません。

またX社は「表明保証違反による解除」も問題にしました。表明保証の内容は「契約時に譲渡債権に倒産や抗弁事由など具体的な危険が生じていないこと」などであり、「100%譲渡債権が払われること」を保証するものではありません。表明保証条項自体が不当なものとはいえないのです。また虚偽報告を行ったら表明保証違反によって契約を解除されても当然といえるでしょう。表明保証の内容がよほど不当でない限り、表明保証義務違反による解除条項があっても契約は金銭消費貸借契約にならないと考えられます。

なお不当な表明保証とは、たとえば以下のようなものが考えられます。
「いかなる事情があっても譲渡債権が完全に払われることを保証し、払われないときは自社が負担する」
こういった内容の場合「買戻特約」と同じ結果になる可能性があり、契約の法的性質に影響が及ぶと考えられます。

弁護士の中には「事実上、買い戻さざるを得ない立場」「表明保証義務違反による解除」「取立事務委託契約」「債権譲渡通知を送らない(対抗要件を備えない)」などの事情を重視して「金銭消費貸借契約となり、過払い金請求できる」とアドバイスする方がおられるようですが、必ずしも正しくありません。

今後のファクタリング会社の運用方針を決定する際やファクタリング利用を検討している企業さまはぜひ、今回の裁判の内容を参考にしてください。
令2年(ワ)第14733号 不当利得返還請求事件
事案の概要
本件は、ファクタリングを利用した事業者(管工事業)がファクタリング会社に対し、「本件のファクタリング契約は実質的に債権譲渡担保つき金銭消費貸借契約である」と主張して「公序良俗違反」とし、支払い済みの回収金の全額について返還請求権を主張した事案です(ただし実際に訴訟上で請求されたのはその一部です)。

また契約が有効であるとしても、少なくとも「利息制限法を超過する手数料分」については不当利得になるとして、予備的に過払い金返還請求も行われました。

当事者
原告…A社(管工事業)
被告…B社(広告代理店等。ファクタリングも行っている)

前提事実
管工事業を営むA社は、広告代理店業務などを主に行っているB社のファクタリングサービスを利用しました。 売掛債権の譲渡は6回にわたって行われ、譲渡債権の額面額は合計391万円、ファクタリング手数料額が差し引かれたためA社へ実際に支払われた譲渡代金は311万5000円でした。

A社とB社の間では「取立事務委託契約」が締結され、第三債務者からの債権回収はA社が行うことになっていました。そこでA社は債権回収を行い、回収した303万800円をB社へ支払いました。

原告(A社)の主張
A社はB社に対し本件訴訟において、以下の2つの主張を行いました。
主位的主張
主位的主張とは「第1次的な主張」です。主位的主張が認容される場合、他の主張について判断してもらう必要はありません。

A社の主位的主張は、「本件ファクタリング契約は公序良俗に反して全面的に無効」というものでした。理由は「ファクタリング契約が実質的に債権譲渡担保つきの金銭消費貸借契約であり、貸金業法や利息制限法を潜脱する違法行為」というものです。

A社が「金銭消費貸借契約」と主張した根拠
A社が「本件のファクタリング契約が実質的に金銭消費貸借契約」とした根拠を示します。
●取立事務委託契約が締結されていた
本件でB社はA社へ債権回収を委託していました。債権譲渡が行われた場合、原則的にはB社自身が債権回収するはずです。それにもかかわらず取立事務委託契約が締結されたことは実質的に金銭貸借契約であると伺わせる事情であるという主張でした。

●回収できなければ契約を解除できると定められていた
A社とB社とのファクタリング契約では、第三債務者からの回収が不能な一定の場合に契約解除ができる旨が定められていました。

●譲渡された債権がA社の保有する債権の一部であった
譲渡対象となったのはA社が第三債務者に対して有する債権のうち一部でした。

●B社が債権回収不能のリスクを負っていない
A社は「本件ファクタリング契約においてB社は債権回収不能となった場合のリスクを負っていない」と主張しました。債権譲渡契約であれば譲受人がリスクを負担すべきところ、B社はリスクを負っていないので本件契約は金銭消費貸借である、という主張です。

●第三債務者による不払いが生じたときにB社が第三債務者へ請求しないためにはA社は買い戻しをせざるを得ない立場であった
取立事務委託契約が締結されていても、第三債務者が支払いをしない場合には譲受人であるB社が直接第三債務者へ請求することになります。
しかしB社が請求すると第三債務者に「A社がファクタリングを利用した事実」を知られて信用が毀損されるおそれがあります。信用を維持して取引を継続したいならA社は「事実上債権の買い戻しをせざるを得ない」立場ともいえます。
これでは「買戻特約」がついているのと同様といえるので、債権譲渡契約とは認められないと主張しました。

●ファクタリング契約の際、B社はA社の信用調査を行った
ファクタリング契約を締結するとき、B社はA社の信用調査を行ったうえで手数料率を定めたことも「実質的に金銭消費貸借契約」である根拠とされました。

以上よりA社は本件ファクタリング契約について、金銭消費貸借契約を債権譲渡契約といい換える脱法行為であり公序良俗に反して「全部が無効」と主張しました。「支払った全額の返還請求権がある」と主張し、裁判ではその一部である180万円の返還を求めました。

予備的主張
予備的主張とは、「主位的主張が認められかった場合に念のために行う2次的な主張です。
A社は主位的主張が認められない場合に備え「本件ファクタリング契約の全部が無効ではないとしても、利息制限法を超過する『払い過ぎ利息』については取り戻し請求権がある」と予備的に主張しました。結果として53万1764円の過払い金の返還を請求しました。

被告(B社)の反論
B社はA社の主張を全面的に否定し「そもそも本件ファクタリング契約は売掛債権売買契約(債権譲渡契約)であり金銭消費貸借契約ではない」と反論しました。
「取引の際に買い戻しが合意されていた事情も一切なく、債権譲渡担保つきの金銭消費貸借契約と評価される余地はない」と主張しました。

結論的に本件ファクタリング契約が公序良俗に違反することもないし、利息制限法も適用されないので利息の過払いが生じる可能性もなく、B社がA社へ何らかの支払いをする必要はない、という主張です。


裁判所の判断
以上のA社とB社の主張に対し、裁判所は以下のように判断してA社の主張を全面的に排斥しました。
経済的に金銭消費貸借契約に似た特徴があっても債権譲渡契約は成立する
A社は本件ファクタリング契約の目的が資金調達であり、経済的には「債権譲渡担保つき金銭消費貸借と同様」である事情を連ねて「金銭消費貸借契約」であると主張しました。

しかし裁判所は「経済的な性質が金銭消費貸借に類似する債権譲渡契約が禁止されるものではない」「A社の主張する事情があるとしても本件各取引が売買であることが否定されるわけでもない」と判断しました。

買戻し合意は存在しない
A社は「第三債務者が支払いを怠ったときにB社が第三債務者へ直接請求するとA社の信用が害されるので、A社は事実上買い戻しをしなければならない立場にあった」と主張しましたが、裁判所は「そういった事実上の事情があったとしても『買戻しの合意があったとはいえない』」「A社における事実上の不利益はおよそ債権の売買において一般的に生じうる現象であり、売買契約としての性質を否定する特別な事情にはならない」と判断しました。

公序良俗違反といえない
本件取引はいずれも債権の売買契約であるから、手数料が高額であるとしても利息制限法に違反せず、公序良俗に反しないと判断されました。
よってA社による主位的主張(契約が無効で支払った債権の全額について返還請求があり、一部である180万円の請求)は棄却されました。

利息制限法の適用もない
本件において取引の性質が債権譲渡契約である以上、利息制限法の適用はありません。
よってA社がB社へ支払った手数料が「利息の過払い」になる可能性もなく、過払い金としての53万1764円の返還請求も認められませんでした。

以上のとおり、A社の主位的主張も予備的主張も否定されたためA社は全面的に敗訴し、本件訴訟はファクタリング会社であるB社の前面勝訴に終わりました。

講評
本件ではファクタリングを利用した会社が「実質的に金銭消費貸借契約である」と主張して「支払った債権全額の返還請求権(公序良俗違反を前提とし、契約の無効を主張)」と「過払い金返還請求権(契約は有効としても、利息制限法を超過する部分の返還請求)」を請求しています。

しかし裁判所は上記の双方を否定しました。原告が「実質的に金銭消費貸借契約である」根拠を十分に主張立証できなかったためです。

事実上の不利益のみでは買戻し特約が認められない
事業者間の2社間ファクタリングが実質的に金銭消費貸借契約といえるためには、「回収不能リスク」をファクタリング会社が負っていなければなりません。
そのためには契約において明示的に「買戻し特約」がついているなどの事情が必要です。単に「ファクタリング会社が第三債務者へ請求すると信用が毀損されるので、譲渡会社が秋戻さざるを得ない」といった事実上の事情があるだけでは、買戻し特約は認定されません。

経済的な機能と法的性質はイコールではない
ファクタリングは資金調達目的で利用されるので、債権譲渡契約とはいっても「経済的には金銭消費貸借契約に近い」性質を持ちます。ただし本判決では「それだけでは法的に金銭消費貸借契約と同一に取り扱うことはできない」と判断されています。

今後ファクタリングの利用を検討されている企業やファクタリング業務を行っている事業者の方はぜひ参考にしてみてください。
平31(ワ)7026号、令元(ワ)26932号、令元(ワ)27042号
事案の概要
本件は、2社のファクタリング会社で資金調達をした会社(以下「A社」とします)が「ファクタリング契約は実質的に金銭消費貸借契約であり無効」と主張して返金を求めた事案です。ファクタリング2社からも「反訴」が提起されました。

ファクタリング会社への既払い金返還請求
A社はファクタリング会社2社(以下「X社」「Y社」とします)で資金調達を受け、継続的に取引をしていました。 ところが取引の途中で「ファクタリング契約は実質的に金銭消費貸借契約であり、貸金業法や出資法を潜脱する悪質なもので公序良俗に反し、無効」と主張し始めました。X社及びY社へ払った金銭を返還請求するとともに、未払いのままになっていた回収債権の支払いも拒否しました。
A社がX社へ返還請求した金額は132万円、Y社へ返還請求した金額は125万円でした。


ファクタリング会社が利用会社へ未払金の支払い請求
X社とY社は「ファクタリング契約は有効な債権譲渡契約である」と反論。受け取った金銭の返還には応じず、反対にA社に対し未払いの回収債権の支払いを求めました。
X社がA社へ返還請求した金額は125万円、Y社がA社へ返還請求した金額も同じく125万円でした。

利用会社が取引履歴の開示請求
A社はX社へ払いすぎた金額を計算するために「これまでの取引履歴」の開示を求めました。貸金業法上「貸金業者」は債務者から取引履歴の開示請求を受ければ速やかに開示しなければならないと定められているため、その規定を根拠とした請求でした。

X社は「A社との取引は債権譲渡契約であり金銭消費貸借ではないので貸金業法は適用されない」と主張、取引履歴の開示請求に応じませんでした。
そこでA社はX社の取引履歴不開示によって「精神的苦痛」を受けたと主張し、10万円の慰謝料を請求しました。

本件の請求関係まとめ
以上より本件では、以下の3本の事件が起こって併合審理されました。

●A社からX社、Y社への既払い金返還請求とX社への慰謝料請求(本訴請求)
●X社からA社への未払金請求(反訴請求)
●Y社からA社への未払金請求(反訴請求)

なお「反訴」とは本訴の被告が原告を訴え返す手続きをいいます。

裁判の経過
A社の主張
裁判においてA社は、本件のファクタリング契約は「公序良俗違反」あるいは「貸金業法42条1項」により無効と主張しました。
貸金業法42条1項は、貸金業者が年利109.5%を超える利率を定めて貸付を行った場合、その金銭消費貸借契約を無効と定めています。A社とX社及びY社のファクタリング契約は「年率」にすると109.5%を超えていたので、本件ファクタリング契約が金銭消費貸借契約であれば貸金業法42条1項違反となり、当然に無効となります。

本件契約が金銭消費貸借契約である根拠
A社の主張の骨子は「本件の契約が債権譲渡担保つきの金銭消費貸借契約」というものです。
契約の法的性質の判断基準として「ファクタリング契約が債権譲渡か金銭消費貸借契約かは、債権に対する支配力を無条件で譲受人に移転するかどうかで決するべきである」と主張しました。契約によって無条件で譲受人に支配力が移転するなら債権譲渡契約といえるけれども、譲受人への支払いが不履行となった時点ではじめて譲受人が支配力を取得する場合には譲渡担保つきの金銭消費貸借になる、という意味です。

対抗要件が具備されない2社間ファクタリングの場合、当面は譲受人であるファクタリング会社が債権の取り立てを行う予定がないため「支配力を獲得した」とはいえません。
よってファクタリング契約は「債権譲渡担保つき金銭消費貸借契約」といわざるをえず、高すぎる金利を定めた本件2社との契約はいずれも無効になる、と結論づけました。


X社、Y社の主張
A社に対する反論
X社、Y社はいずれもA社の主張を否定し「本件ファクタリング契約は債権譲渡契約」と反論しました。
根拠は以下の通りです。
●本件ファクタリング契約は、「債権の売買契約」と「債権取立の業務委託契約」であり、金銭消費貸借契約ではない
●第三債務者の債務不履行の危険はファクタリング会社が負っている
●実際に契約書とおりに債権の交付が行われている
●債権の額面額と債権の買取価額との間に比例関係がない
●第三債務者の信用調査を行った上で債権の買取が行われている
●X社はA社から債権譲渡通知用の書類を受け取り、いつでも対抗要件を具備できるよう準備していた
●債権譲渡の対抗要件を備えていなくても債権譲渡契約は有効である
●そもそも、第三債務者へ債権譲渡の通知を送らず対抗要件を備えなかったのはA社自身の希望に沿った対応であり、今になってそれを根拠に「金銭消費貸借契約である」というのは信義則に反する

本件ファクタリング契約が債権譲渡契約であれば、手数料が高くても公序良俗違反になりませんし貸金業法が適用されないので貸金業法違反にもなりません。
またX社は取引履歴の開示請求に応じませんでしたが、貸金業法の適用がないので開示に応じなくても契約は無効になりません。

A社への請求
A社はX社とY社でファクタリングを利用して資金調達を受け、業務委託契約によって回収した債権をX社とY社へ払う約束をしていました。ところが途中で「契約は無効」と主張し始めたため、回収した債権を支払わず未払いの状態になっていました。
そこでX社はA社に対し契約にもとづく取立金の引き渡しとして125万円を請求。Y社はA社に対し、債務不履行にもとづく損害賠償請求として125万円の支払いを請求しました。

裁判所の判断
A社とX社の契約について
裁判所はA社とX社のファクタリング契約の性質について、以下のような理由で「債権譲渡契約」と認定しました。
●契約書において債権譲渡契約と記載されており、譲渡担保目的ではないことも明記されている
●X社は第三債務者の審査を行いその信用にもとづいて債権の買取価格を決定している
●第三債務者の無資力リスクはX社が負っており、買戻特約もついていない
●契約上、一応は債権譲渡の対抗要件を備えないことになっていたが、X社側がいつでも撤回して債権譲渡通知を送れるように準備も行われていた
●手数料は債権額面の2~3割程度であったが、X社が第三債務者の無資力リスクを負うことから考えると不当に高すぎるとはいえない

A社とY社の契約について
A社とY社の契約については、次のような理由によりやはり「債権譲渡契約である」と認定されました。
●契約書において債権譲渡契約と記載されており、譲渡担保目的ではないことが明記されている
●第三債務者の無資力リスクはY社が負っており、未払いとなったとしてもY社はA社へ償還請求権が認められない契約内容であり、買い戻しは予定されていなかった
●債権譲渡の対抗要件を備えない点については、Y社側がいつでも撤回できることになっていた
●手数料は債権額面の2割程度であったが、一般的な債権譲渡契約における手数料率として高すぎるとはいえない

結論的にA社とX社、Y社とのファクタリング契約はいずれも有効な「債権譲渡契約」であるから公序良俗違反にならないし、貸金業法や出資法等の適用もなく無効にならないと認定しました。
X社やY社がA社へ受け取った債権額を返還する必要はなく、反対にA社はX社とY社に対し、未払い金の支払いをしなければならないと結論づけられました。

X社への慰謝料請求について
A社はX社に対し、取引履歴を開示しなかったことについて「慰謝料」を請求しましたが、裁判所の認定によると、そもそも本件は債権譲渡契約であって金銭消費貸借契約ではなく貸金業法が適用されません。
X社に取引履歴の開示義務はないと判断され、慰謝料請求も認められませんでした。

講評
本件では、ファクタリングを利用した会社が「ファクタリング契約は実質的に譲渡担保つき金銭消費貸借契約である」と主張し、ファクタリング会社へ既払い金の返還請求や慰謝料請求をしています。

これに対し裁判所は「第三債務者への調査が行われたこと」「第三債務者の未払いについての危険をファクタリング会社が負担していたこと」などを重視し、契約の法的性質を債権譲渡契約と認定しました。X社とY社は債権譲渡の対抗要件を備えていませんでしたが「いつでも対抗要件を備えられるよう準備していたこと」なども考慮されています。

このようにファクタリング契約の法的性質を決定する際には「誰が第三債務者の不払いリスクを負担するか」「第三債務者の調査が行われたか」などが重要なポイントとなります。

第三債務者が不払いを起こしたときの返還請求権や買戻特約がついておらず、契約時に第三債務者の信用調査が行われて手数料率が定められた場合、ファクタリング契約は「債権譲渡契約」と認定される可能性が極めて高いといえるでしょう。

本件では利用企業からファクタリング会社へ貸金業法違反にもとづく「慰謝料請求」も行われていますが、こちらについても契約が債権譲渡と認定されれば当然認められません。

今後の参考にしてください。
平27(ワ)24214号 供託金還付請求権帰属確認請求事件
事案
信用金庫がファクタリング会社を訴えた事例です。
原告となった信用金庫はある運送会社(A社)へ貸付をしていましたが、A社は資金繰りに窮してファクタリングを利用し資金調達を行いました。その際ファクタリング会社は第三債務者へ確定日付のある債権譲渡通知を送り、対抗要件を備えました。
債務整理と供託
その後A社が倒産状態となり弁護士に依頼して債務整理を開始。A社は税金も滞納していたので税務署による滞納処分が行われました。信用金庫が仮差押命令を取得したところ、第三債務者は代金の真正な権利者が不明となったため「供託」を行いました。

原告(信用金庫)への弁済拒否
信用金庫はA社に対する仮執行宣言つき判決を受け、さらにA社の国に対する債権について、債権差押命令の発布を受けました。
ところがファクタリングの対象となった債権についてはファクタリング会社が先に対抗要件を備えていたため、国としては「830万5424円(ファクタリングの対象となった債権)については誰に権利があるのか不明」とし、原告への弁済を拒否しました。

そこで原告はファクタリング会社へ対し「被告への債権譲渡は無効であり、被告に供託金還付請求権は認められない。自社へ供託金還付請求権を認めるべき」として、権利の確認を求めて提訴しました。

裁判の経緯
原告の主張
原告は以下のように述べて「被告への債権譲渡は無効」であり、供託金の取り戻し請求件は原告に認められると主張しました。

譲渡禁止特約について故意や重過失がある
被告へ譲渡された債権には譲渡禁止特約がついており「被告は譲渡禁止特約について知っていたか、知らなかったとしても重過失がある」ため被告への債権譲渡は無効

本件債権譲渡は弁護士法73条違反である
「被告は業務として債権譲渡を受け訴訟や示談などの方法で実行しているので弁護士法73条に違反する」
※弁護士法73条は、「弁護士以外のものが他人の権利を譲り受けて、訴訟、調停、和解その他の手段によって権利の実行をすることを業とすることができない。」と定めています。

本件債権譲渡は貸金契約である
「ファクタリング取引は、外見上は債権譲渡であっても実質的にはお金を貸し付けて弁済期がきたら資金を回収する貸金契約と同じ性質を持つ」
「ファクタリングは手形取引と共通の機能をもっている」
「本件では貸金契約であるにもかかわらず被告が貸金業登録をせずに違法に貸付が行われたので、無効である」

公序良俗違反
本件では830万5424円の額面額の債権が672万7394円で取引されているが、これを年利に直すと329%、貸金契約であれば明らかに暴利である。
よって本件ファクタリング契約は公序良俗に反して無効。

被告の反論
譲渡禁止特約に関して重過失はない
貸付の際、被告はA社に対し「譲渡禁止特約がついていないことの確認」をとり同意書も取り付けている。契約当時、他に譲渡禁止特約の存在を伺わせるような事情もなく、被告には重過失は認められない。
重過失があったとしても債権譲渡は有効
本件では第三債務者へ債権譲渡通知が送られ、第三債務者は異議をとどめず承諾している。そこで仮に被告に重過失があったとしても債権譲渡は有効に成立する。
弁護士法73条に違反しない
「被告はファクタリングによる事業者への資金調達支援を業務とする会社であり、みだりに訴訟や調停などのトラブルを起こして介入しようとするものではない。
社会的経済的に正当な範囲でファクタリング業務を行っており弁護士法73条に違反しない」。
貸金業法に違反しない
「本件ファクタリング取引は買い戻し義務のないノンリコースのタイプであり、金銭消費貸借や手形取引類似のものとはいえない。第三債務者の倒産等の回収リスクも被告が負っている以上貸金契約に該当せず、被告が貸金業登録をしていなくても貸金業法に違反しない」。
公序良俗違反にならない
本件ファクタリングの手数料率は粗利で約19%であり、一般的なファクタリング契約として暴利とはいえない。

裁判所の判断
譲渡禁止特約について
本件ではA社のS社に対する運送債権に譲渡禁止特約がついていましたが、被告はファクタリングを実行する際にA社から確認書や同意書をとるなどして「譲渡禁止特約が付されていないこと」を慎重に確認していました。また契約時においてA社が虚偽を述べていると疑われるような事情もなかったため被告が譲渡禁止特約について知っていたとはいえず、重過失もなかったと判断されました。

弁護士法73条違反について
弁護士法73条違反となるのは「弁護士ではないものが権利の譲渡を受けてみだりに訴訟を誘発し、紛争を助長したり弁護士法72条を潜脱したりする場合」と理解されています(最高裁平成14年1月22日)。
※弁護士法72条は弁護士以外のものが業として法律業務を行う報酬を得ることを禁止している法律です。

ファクタリング業者が債権譲渡を受ける目的は資金調達を行って手数料を得るためであり、訴訟や紛争をみだりに誘発するためではありません。弁護士以外のものが法律業務を行うことを禁止する弁護士法72条にも抵触しないので弁護士法違反の点はないと判断されました。

本件取引は貸金契約ではない
確かにファクタリングには債権譲渡に似た性質もありますが、貸付と異なりあくまで「売買として債権を買い取る」契約です。また本件では買戻特約もついておらずノンリコースであり被告が不払いリスクを負っていたので貸金契約と同様とはいえません。
手形割引の場合には譲渡人に遡求義務があり銀行取引約定書において買い戻し義務が定められていますが、買い戻し義務のないファクタリング契約は手形割引とは異なることが明らかです。
よって本件ファクタリング契約は貸金契約に該当しないと判断されました。

公序良俗違反にならない
本件ファクタリング契約の性質は貸金契約ではなく債権譲渡契約であり、手数料も債権譲渡契約におけるものとしては暴利とはいえず、公序良俗違反にもならないと判断されました。

結論
原告の主張はすべて排斥され「先に対抗要件を備えた被告」に優先権が認められるので原告の請求は棄却されました。つまりファクタリング会社に優先的な供託金取り戻し請求権が認められたのです。

講評
ファクタリング実施の際には「譲渡禁止特約の確認」が重要
本件ではファクタリング業務における「譲渡禁止特約がついていないことの確認」の重要性が示されています。 被告はファクタリング契約の際にA社から同意書をとるなどしてしっかり譲渡禁止特約の有無について確認していたため「重過失はない」と判断されました。
もしも確認していなければ「重過失あり」と判断され、ファクタリング会社に請求権が認められなかった可能性があります。
ファクタリング業者が事業者からファクタリングの申し込みを受けた場合、必ず当該債権に譲渡禁止特約がついていないか調査して記録を残し、同意書や誓約書などの書面の差し入れを求めるべきといえます。

弁護士法73条違反に要注意
ファクタリングと弁護士法73条の関係にも注意が必要です。
既に紛争が生じている案件や紛争になりそうな案件においてむやみに債権を取得すると「みだりに紛争に介入しようとしている」として弁護士法73違反とされるリスクがあります。ファクタリングの申し込みを受けた場合、紛争案件ではないかしっかり確認して記録を残すべきと考えます。
なお「ファクタリング利用時」に紛争が生じていなければ、後に支払拒絶などの紛争が生じたとしても通常問題にはなりません。
平26(ワ)2654号 損害賠償請求事件
事案の概要
ファクタリングを利用する際、申込み会社が「架空の債権」をねつ造していた事件です。
申し込み会社はA社(おそらく建設業)。A社代表取締役Bと取締役のCは、結託して「東日本大震災の復興工事に関する工事代金債権」をねつ造し、X社(ファクタリング会社)へ資金調達を申し込みました。 X社は債権が実在すると信じてA社へファクタリングを実行し、額面額1億3977万1800円の債権(すべて架空)を譲渡対象として、X社からA社へ手数料を割り引いた1億2579万4620円が交付されました。

その後、債権の弁済期が到来しても当然債権は支払わなかったためX社が調査したところ「架空債権」である事実が発覚。 X社はBやCによる詐欺について「不法行為にもとづく損害賠償請求」として、A社と代表者であるBに対し訴訟を提起しました。 なおA社については使用者責任や不当利得返還請求、Bについては会社法上の取締役の責任追及も請求原因とされています。 裁判では弁護士費用として1250万円も請求されました。

当事者
A社…ファクタリングを利用した中小企業。本件の被告。
B…A社の代表取締役。取締役Cと結託して債権をねつ造し、X社にファクタリングを申し込む。本件ではA社と並んで被告となった。
C…A社の取締役。Bと結託して架空債権のねつ造に関与。ただし訴訟の被告にはなっていない。
X社…ファクタリング会社。本件の原告。
紹介会社…X社へ顧客を紹介していたと思われる会社。X社とA社の間をとりもっていた。

裁判の経緯
X社の主張
不法行為に基づく損害賠償請求
A社の取締役Cは実際には工事が存在しないのに架空の工事をでっちあげて債権があるかのように説明し、X社をだまして資金調達を行った
A社には上記Cの行為に関して使用者責任が成立する
A社の代表者であるBは工事が架空であると知りながら架空債権を譲渡してXから資金調達を受けたので不法行為責任を負う

会社法の任務懈怠責任
A社の代表者であるBが架空債権を譲渡したのは善管注意義務違反であり、任務懈怠責任を負う。よってA社もその損害賠償をしなければならない

不当利得返還請求
A社は架空の債権を譲渡して資金調達しており「法律上の原因なしに受益している」し、自ら債権をねつ造しているので「悪意」である。よってX社に対し、年5%の利息をつけて受け取った金額を返還しなければならない

弁護士費用
本件の請求金額は1億2579万4620円であり、その10%である1250万円は弁護士費用としてA社からX社へ支払われなければならない


A社側の反論
A社と代表者であるBは「本件のファクタリング契約は金銭消費貸借契約であり、譲渡された債権が架空かどうかは契約の有効性に影響しない。詐欺ではないので不法行為や不当利得は成立せず、調達した資金の返還義務はない」と主張し、X社側の請求を否定しました。
つまり「貸金契約である以上、被告は期日までに利息相当分を上乗せしてX社へ支払う義務を負うだけである。X社が債権回収することはまったく予定していなかったため、当該債権が架空かどうかは問題にならない」という理屈です。

ファクタリング契約を金銭消費貸借契約とする根拠は以下のとおり主張されました。
●第三債務者の無資力リスクはA社が負担していた
●X社は債権譲渡の対抗要件を備えていなかったし、万一のときに債権譲渡通知を送るためにA社からX社へ交付された書類にも形式的な不備があり通数も足りていなかった
●取引先への信用調査が行われていない
●数回にわたってファクタリングが行われたにもかかわらず、利率や支払い予定日が一定である
●紹介会社が信用調査を兼務している
●X社の代表者は金融のプロフェッショナルである


Bの任務懈怠責任について
本件契約は金銭消費貸借契約であり、債権が架空かどうかは問題にならない。よって架空債権をX社に提示してもBは善管注意義務違反にならず、A社も会社法上の責任を負わないと反論しました。

不当利得返還請求について
本件で締結されたファクタリング契約は、実質的に金銭消費貸借契約であるにもかかわらず利息制限法を大きく上回る「利率」が設定されている。よって「貸金業法」や「利息制限法」「出資法」の脱法行為といえ公序良俗違反となり無効になる。
X社によるA社への貸付は「不法原因給付」になるため、A社はX社へ返還義務を負わないと主張しました。

過失相殺
上記に加え、A社側は「過失相殺」も主張しました。過失相殺とは、「不法行為において被害者側にも責任があるため、損害賠償額を減額する」考え方です。被害者にも責任がある以上、損害を公平に分担するために責任割合に応じて賠償額が減額されます。
A社が過失相殺を主張した理由は、以下のとおりです。

●本件ファクタリング契約は貸金業法や出資法などの金融法制の脱法行為として行われた
●架空債権のねつ造や提示はX社の代理人的立場にあった紹介会社の指示によって行われた
上記のようにX社側にも責任があるため、たとえ損害賠償が認められるとしても過失相殺によって大幅に減額されるべき、と主張しました。

裁判所の判断
BとCには欺罔行為がある
本件では、A社の代表者であるBと取締役であるCに「欺罔行為(X社をだます行為)」があったかどうかが問題となりました。
欺罔行為があれば基本的に不法行為が成立し、A社とBはX社へ損害賠償をしなければなりません。


裁判所は以下のような理由によりBとCに欺罔行為を認めました。
●CはX社との個別契約に先立って工事請負代金債権の請求書をねつ造し、現場写真を撮影するなどしてX社へ提出した
●Bは譲渡債権に架空債権が含まれている事実を知りながら、ファクタリングを実行した
●譲渡債権が架空であったことをX社が認識していた事情はまったくみられない

本件は金銭消費貸借契約ではない
A社側は「本件債権譲渡契約は実質的に金銭消費貸借契約であるから、架空債権であっても問題にならない」と主張しましたが、この点について裁判所は以下の理由で否定しました。

●本件ファクタリング契約において、取引先(架空)の無資力リスクはX社が負担していた
●本件では債権譲渡の対抗要件が備えられておらず、A社からX社に交付された債権譲渡通知書も通数が不足しており内容に形式的な不備があった問題がある。しかしX社はA社へ追加で通知書の交付を求めていた事情もあり、契約が金銭消費貸借であるといえる理由にはならない
●X社は譲渡債権について一定の調査を行っている
●紹介会社が介在していたりX社の代表者が金融のプロフェッショナルであったりしても、本件契約が金銭消費貸借契約であったとはいえない

過失相殺は適用しない
A社側は「本件ファクタリング契約は貸金業法や出資法等の脱法行為である」から過失相殺を適用すべきと主張しましたが、裁判所は「そもそも本件契約は金銭消費貸借契約ではない」と判断してこの主張を排斥しました。
またファクタリングの紹介会社が介入し、紹介会社がX社の履行補助者、代理人として架空債権のねつ造を先導したという主張に対しては「そもそも紹介会社がX社の代理人や履行補助者的立場であったとはいえない」と認定。また紹介会社の代表者が債権のねつ造を知っていた事情も認められないなどの事情もあり、過失相殺は認めませんでした。


損害額
本件ではA社が架空債権をでっちあげて資金調達を受け、合計1億2579万4620円を詐取しているといえるから、この金額はX社における損害額でありA社は全額払わねばならない。
またその10%である1250万円が関連する弁護士費用と認められるから、A社とBは連帯して合計1億3829万4620円と遅延損害金(年5%)を払わねばならない、と認定し、A社とBへ支払い命令を下しました。

講評
本件ではファクタリングを利用した中小会社が架空の請求書をねつ造し、ファクタリング会社をだまして資金調達を受けています。実際、架空債権をでっちあげてファクタリングを受けようとする企業は少なくありません。
しかし偽造した請求書や契約書でファクタリングを受ける行為は詐欺であり、本件のように不法行為を構成します。民事的に損害賠償請求されたら、利用会社は遅延損害金と弁護士費用を加算した全額を返還しなければなりません。

本件で被告会社側は「実質的に金銭消費貸借契約なので債権が架空かどうかは関係ない」と主張しましたが、このような主張は認められないのが通常です。本件でも反論は否定されましたし過失相殺の主張も全面的に否認され、原告の請求が全面的に認められています。

そればかりか、詐欺は刑法的にも「詐欺罪」という犯罪を構成します。ファクタリング会社が刑事告訴をすれば、利用会社の代表者や実行犯となった役員が逮捕起訴されて有罪となる可能性もあります。

ファクタリングを利用するときに架空債権を捏造する行為は極めてリスクが高いので、絶対にしてはなりません。今後の参考にしてみて下さい。
令2(ワ)19565号 不当利得返還請求事件
1. 事案の概要
本件は、土木物流等を主要事業とするA社が当社を訴えたケースです。
 
A社と当社のファクタリング契約の内容
A社はかつて、資金調達のために6回にわたって当社におけるファクタリングサービスを利用しました。
A社が当社へ譲渡した債権の額面額は合計4245万円、当社の手数料が642万円分差し引かれたため、A社が受け取った譲渡金額は合計3603万円です。
これは事業者ファクタリングの一般的な相場です。
また当該ファクタリング契約においては、債権の譲受人である当社ではなく譲渡会社であるA社が自ら債権回収を行い、回収した金額を当社へ支払う内容となっていました。いわゆる「2社間ファクタリング」の事例です。

  A社による当社への不当利得返還請求
A社は上記の通りファクタリングを利用して資金調達を行ったのですが、後に当社に対し、弁護士をつけて「ファクタリング契約は実質的に貸金契約であり、手数料が高額過ぎるために過払い金が発生する」と主張してきました。 本来、ファクタリングは「債権譲渡契約」です。
債権譲渡契約には利息制限法は適用されません。
それより超過する手数料の設定も認められますし、ファクタリング業者が貸金業者として登録する必要もありません。そもそもファクタリング業者は金融機関よりも高いリスクを被っている以上、銀行と同じ利率ではビジネスが成り立たないのです。
金融機関で融資を受けられない状況の中小企業がファクタリングを頼って資金調達を行い、生きながらえているケースも多々あります。
ところがファクタリング契約が貸金契約となると「利息制限法」や「貸金業法」が適用されるので、高額なファクタリングの手数料は「利息制限法違反」となってしまいます。
するとファクタリング利用企業はファクタリング会社に対し、払いすぎた「利息」の返還請求ができるのです。いわゆる「過払い金請求」です。
 
A社は上記のような理屈を展開し、当社との間の2社間ファクタリングは「実質的に貸金契約」であり、利息制限法に引き直して計算すると597万4309円の「払いすぎ利息」が発生している、と主張しました。
 
その上で訴訟においては597万4309円のうち「180万円」の返還を求めて提訴してきたのです。
 
2. 裁判の経緯
本件裁判の経緯について、順を追ってご説明します。

A社の提訴内容
まずはA社が当社を提訴しました。
A社の主張内容は以下のようなものとなっています。

  「A社はPMG社とファクタリング契約を締結したが、これは実質的には債権譲渡契約ではなく貸金契約である」理由として挙げられた事情は以下の通りです。

■ 譲渡されたのが債権の一部であった
本件でA社から当社へ譲渡されたのは債権全体ではなく一部であったことから、当社が未回収の危険を負わないとして「ファクタリング契約より貸金契約に近い」と主張されました。
■ A社が債権回収を行う業務委託契約が締結されていた
譲受会社である当社ではなく譲渡会社であるA社が債権回収を行うとする業務委託契約が締結されており、いわゆる2社間ファクタリングが行われたため、当社は債権未回収の危険を負わないものとして「本件契約は実質的に貸金契約」と主張されました。
■ A社は「債権の買戻し」を行わねばならない立場であった
本件ファクタリング契約には「買戻し特約」はついていませんでしたが、A社は「本件においてA社は買戻しを行わねばならない立場であった」と主張しました。
理由としては「債権未回収となってPMG社が取引先に債権の督促状を発送すると取引先による信用を失うため、A社としては直接回収を防止するため買い戻しせざるをえない」というA社の内部事情が挙げられていました。
上記の通り、本件でA社と当社との間で締結されたファクタリング契約は実質的に貸金契約なので利息制限法が適用され、払いすぎた利息である597万4309円のうち180万円の請求を求める、というのがそもそものA社による主な主張となります。
 
当社の反論
上記のA社による主張に対し、当社は以下のように反論しました。
 
「ファクタリング契約は債権譲渡契約である」
「債権譲渡契約である以上、利息制限法の適用はない」
 
以下で詳しく解説します。
 
そもそもファクタリング契約は債権譲渡契約であるファクタリング契約は、本来的な性質上「債権譲渡契約」です。 事業者がファクタリング会社へ売掛金を譲渡して早期に資金を調達し、ファクタリング会社が手数料を受け取って利益を得るビジネスモデルであり、世界でも広く普及しています。
近年ではみずほフィナンシャルグループやHISなどのコンプライアンスを重視する大手金融会社や旅行会社などもファクタリング業へ参入しており、明らかに合法ですし世界でも広く認められているビジネスの一形態です。ファクタリングが貸金業ではなく債権譲渡であることについては東京地裁における他の判決によっても明らかにされており、 すでに確立された実務となっていると言っても過言ではない、と主張しました。
 
債権の一部譲渡であることと債権譲渡契約であることは矛盾しない
A社は本件において債権の一部譲渡が行われたことにより本件ファクタリング契約が貸金契約である、という主張を展開していました。
しかし債権の一部譲渡契約は法律上有効であり、一部譲渡だからといって貸金契約になるという理屈は成り立ちません。そもそも企業の資金調達は「必要な範囲」で行うべきものであり、常に債権の全額を譲渡しなければならないとすると利用企業にとっても不利益が及びます。債権の一部譲渡であるから貸金契約であるという乱暴な理屈が成り立たないことは明らかと主張しました。
 
買戻特約はついていない
本件ファクタリング契約に買戻特約はついていませんでしたが、訴訟になるとA社は突然「事実上買い戻しをせざるを得ない立場であった」などと主張してきました。「債権が未払いになったとき、A社が買戻しをしなければPMG社が取引先に督促してしまい、A社への信用が損なわれる。
それを防止するために買い戻しをせざるを得ない」というのです。
しかしそのような事情はA社の内部事情であり、買戻特約とは異なります。契約上は、A社は自社で回収できるだけの債権を当社へ引き渡せばそれ以上の責任を負わないのですから、買戻し義務がないことは明らかといえるでしょう。契約上も「売主(A社)は集金した金額の限りで指定された期日までに買主(当社)に引き渡せば足りる」と明示されており、A社に「買戻義務」や「回収不能となった場合の全額支払い義務」がないことが明文化されています。
このような契約上明らかな事項について、無理やり「買戻し特約がついている」というA社の主張に全く根拠はない、と主張しました。
 
ノンリコース型のファクタリング契約である
当社が実施しているファクタリング契約は、完全に「ノンリコース型」です。
ノンリコース型とは、取引先(第三債務者)の倒産等の事情によって債権が未回収となった場合において、ファクタリング会社が利用会社に対し、別の資金によって補填するよう請求できないタイプの契約です。
つまり取引先に債務不履行があってもファクタリング会社は利用企業へ買戻しやその他の請求をできない構造となっており、不払いの最終的な危険はファクタリング会社が負います。
これまでの裁判例により、ノンリコース型のファクタリング契約の場合には「債権譲渡」とみなされ、そうでない契約(取引先による不払いがあったときに買戻しやその他の方法によって利用企業へリスクを転嫁させる内容)の場合にはファクタリング契約が「貸金契約」と認定される実務が定着しつつあります。
 
本件において、当社は「ノンリコース型」を貫いているので、ファクタリング契約は債権譲渡契約としかいいようがなくA社の主張に理由はない、と反論しました。

  以上よりA社の主張には理由がなく棄却されるべき、と結論づけました。

  A社の再反論
上記に対し、A社は以下のように反論してきました。
 
PMG社が売買対象債権についての調査をしていない
A社は本件ファクタリング契約設定の際、「PMG社が売買対象債権について詳細な調査を行っていない」と指摘しました。債権譲渡を受けるなら「第三債務者の資力や信用」が重要なファクターとなるはずなのに、その調査を行っていないのであれば「貸金契約」に近いのではないか、という主張です。
 
A社は2社間ファクタリングを希望していない
本件ファクタリング契約は、A社に債権回収事務を任せる「2社間ファクタリング」です。ただ契約締結時においてA社がこれを望んだわけではなく、当然のように債権譲渡契約書と事務委任の業務委託契約書に署名押印を求められ、自然な流れで契約が締結された、と主張しました。
つまりA社は2社間ファクタリングを希望していないのに、当社の都合で2社間ファクタリングが選択された、という主張です。
 
契約内容からしてPMG社は債権未回収の危険を負わない
A社は以下のように主張して、当社が債権未回収の危険を負っていないとしました。本件ファクタリング契約において、A社はPMG社に対し「第三債務者に支払拒絶する事情がないこと、信用力の問題がないこと」を保証し、またA社が債権を二重譲渡することも禁じられていました。
こういった事情からすると「将来取引先から抗弁を主張されるなどして回収不能となれば、PMG社は契約を解除してA社へ損害賠償請求ができることになる」という理屈を展開。PMG社は債権未回収のリスクを負っていないので、本件ファクタリング契約は「貸金契約と認定すべき」と主張しました。
 
買戻特約について
本件において、債権が未回収となって当社がA社の売掛先に直接督促すると、A社がファクタリングを利用した事実を取引先に知られて信用毀損リスクが発生します。
今後の取引に支障が及ぶのを避けるには、A社としてはなんとしても(他から資金を捻出してでも)PMG社へ支払いをせざるを得ない、そこで本件では「事実上の買戻し義務がある」と主張しました。
 
A社の経営状況が悪化する
本件ファクタリングのように、ファクタリング会社が高額な手数料を徴収するビジネスが合法的に通用するのであれば、A社のような中小企業の経営状況が確実に悪化してしまう、このような不当な状況を阻止するためにもPMG社のような暴利をむさぼるファクタリング業者を厳しく取り締まらねばならない、と主張しました。
 
裁判例について
当社が提出したファクタリング会社が勝訴した裁判例については「本件と事情が異なる」と主張するとともに、ファクタリング会社が敗訴した裁判例を持ち出し、「本件においてもファクタリング契約は貸金契約に該当する」と主張しました。
 
当社が和解を拒絶
その後、裁判所は両当事者に対し「このままではA社の主張を認めるわけにはいかない、請求を棄却する見込みである」という心証が開示されました。つまり「訴訟を進めて判決を下すと、PMG社が勝訴する可能性が高い」ということです。
「判決前に一度話し合いをしてはどうか」という裁判所からの勧告もあり和解協議が行われました。そこでは当社がA社へ「10万円」を支払って和解する内容が提示されました。
 
結論として、当社は和解案を拒絶しました。
当社がA社や代理人弁護士による不当な請求に対して「少額でも和解金を支払った」という前例を作らないためです。

実はA社の代理人に就任している弁護士は、事業者支援団体などから事件の紹介を受けているらしき気配があります。 そういった組織は相談してきた事業者に対し「ファクタリングを利用したならお金を取り戻せる可能性があるので、訴訟を起こすと良い」とアドバイスを行い、原告代理人弁護士を紹介しているようです。
こういった事情を背景に、本来なら認められないようなファクタリング会社相手の訴訟が近年数多く発生しているのではないかと考えられます。
もしも当社がここで和解に応じてしまったら、上記のような団体や原告代理人弁護士のような方がさらに多くの中小事業者に声をかけて無益な訴訟を起こさせ、中小事業者の利益が害されてしまうおそれが懸念されるでしょう。
 
そういった前例を作らないため、当社はたとえ少額であっても和解金の支払いを拒否しました。
 
本件は判決に持ち越されることとなりました。

  3. 判決の内容
令和3年5月27日、東京地方裁判所は判決を下し、以下のように判断しました。
 
結論
結論として裁判所はA社による主張を全面的に棄却し、一切の請求が認められませんでした。
事前の心証開示のとおり、当社の全面勝訴となりました。
 
理由は以下の通りです。
A社が債権全額の支払いを保証したとはいえない
本件ファクタリング契約において、A社は「契約において支払いの保証をさせられたので、未回収が発生したらA社が自己資金で填補しなければならない」といった主張をしています。しかし本件の契約書を見ても、そのような保証義務を定める条項はありません。
むしろ本件ファクタリング契約書には
「売主(A社)が買主(当社)に対し、現在及び将来にわたる第三債務者の資力を担保するものではない」
「債権の完全な履行を保証するものではない」
「債権の全部または一部が履行不能となった場合でも買主は売主に売買代金の返還を求めることはできない」
と明確に定められています。
つまり債権が回収不能となったときには買主である当社がリスクを被る内容となっているのです。
このことからすると「A社がPMG社へ債権全額の支払いを約束(保証)した」というA社の主張に理由はないと判断されました。
 
2社間ファクタリングも債権譲渡契約として有効
本件では、債権譲渡契約と同時に債権回収に関する業務委託契約が締結され、当社ではなくA社が債権回収を行う内容(いわゆる2社間ファクタリング)となっていました。A社はこのことを理由に「本件ファクタリング契約は貸金契約に性質が近い」と主張していましたが、裁判所は「債権回収に関する業務委託契約が締結されているとしても、契約の性質が債権譲渡契約であることに影響しない」としてA社の主張を排斥しました。
譲渡禁止特約がついていない保証について
本件ファクタリング契約において、A社は「売買対象債権に譲渡禁止特約はついていない」と保証していました。これについても通常の売買契約における商品の品質保証と何ら変わる点はなく、金銭消費貸借契約に該当する理由にはならないと判断されました。
 
買戻し義務は設定されていない
A社は、本件ファクタリング契約ではA社に実質的な買戻し義務があったという主張をしていました。
裁判所は以下のように判示し、A社の買い戻し義務を明確に否定しました。
■ 契約書において買戻義務は規定されていない
■ 債権が回収不能となったときにPMG社はA社へ売買代金の返還を求めることはできない、とはっきり規定されている

  買戻し特約がついていないならば本件は「ノンリコース型のファクタリング契約」であり、債権譲渡契約としての性質が認められることになります。
 
その他の原告の主張も認められない
A社は上記以外にも
「債権の一部譲渡が行われたので貸金契約である」
「2社間ファクタリングはA社が望んだものではない」
など、諸々の主張を行っていましたが、裁判所はすべて否定しました。
「原告(A社)はさまざまな主張を行っているものの、いずれも上記認定を覆すものではなく採用できない」と明確に判示しています。
以上より、裁判所はA社による当社への不当利得返還請求を全面的に排斥し、請求を棄却しました。
本件判決から学べること
本件判決はファクタリング利用会社によるファクタリング会社への「不当利息返還請求(過払い金請求)」を全面的に棄却するものです。実は今、東京を中心にA社のようなファクタリング利用会社からファクタリング会社へ対する不当利得返還請求訴訟(過払い金請求訴訟)が数多く提起されています。
一つには、上記にも記載したように事業者支援団体や一定の弁護士が中小事業者へ
「ファクタリングを利用した場合にはお金を取り戻せる」などとアドバイスを行っている事情があるためです。
 
しかしファクタリングを利用したからといって過払い金が発生するわけではありません。
「ノンリコース型」のファクタリング契約の場合には、訴訟を起こしてもほとんどの場合に請求棄却されてしまいます。2社間ファクタリングであっても貸金契約になるとは限らないので、誤解しないように注意しましょう。
 
無益な訴訟を起こせば弁護士費用も労力も時間も、すべてが無駄になってしまいます。
中小事業者が弁護士や事業者支援団体によってファクタリング会社に対する訴訟提起を勧められたときには、不当な不利益を受けないようくれぐれも慎重に判断してください。
 
弁護士の先生方におかれましても「ファクタリング契約は悪、ファクタリングが行われたら過払い金請求できる」というのは誤解ですので、本件判決をご覧になって正しい理解を得ていただけますと幸いです。
平31(ワ)7026号 損害賠償等請求事件(本訴)
1 事案
 本件は、客が売掛債権早期資金化業者に対し、二者間売掛債権早期資金化が債権譲渡担保付き金銭消費貸借契約であることから、貸金業法違反(無登録の貸金業である)及び出資法違反(上限利率を大幅に超える)により公序良俗に反して無効並びに貸金業法42条1項により無効であるとして不当利得返還請求を、また、貸金業者として取引履歴を開示しなかったことなどが不法行為に当たるとして慰謝料の請求をしたところ、これらは認められず、逆に、売掛債権早期資金化業者から取立金の引渡しと遅延損害金の支払いを求められ、これが認められた事案である。
2 争点に対する判断
⑴ 二者間売掛債権早期資金化は債権譲渡担保付き金銭消費貸借契約ではなく債権の売買契約である
客の主張する、公序良俗違反(貸金業法違反及び出資法違反)、貸金業法42条1項による契約無効、及び貸金業者として取引履歴開示義務は、いずれも二者間売掛債権早期資金化が「債権譲渡担保付き金銭消費貸借契約」であることが前提となっており、また、売掛債権早期資金化業者の客に対する反訴請求も本件の取引が債権の売買契約であることに基づくため、この点が争点として判断された。
⑵ 担保目的の推認との関係で考慮された観点(①二者間売掛債権早期資金化の構造的リスクの買取率への影響、②平成18年最高裁判決との比較、③債権額の7~8割程度の代金額)
担保目的の推認との関係では、①法形式の選択、②対抗要件の具備の猶予、③代金額が債権額の7~8割程度、という観点が考慮されている。
①については、債権の譲渡が担保目的でないことが明記されていること、第三債務者に着目した審査基準を元に買取価格が決定されていること、売掛債権早期資金化業者が客に対する償還請求権を有していないこと、買戻しが予定されていないことなどを挙げ、当事者があえて債権の売買契約という法形式を選択しており、実質的にも、譲渡債権に関する債務不履行リスクが客から売掛債権早期資金化業者に移転していると評価されている。この点、本件では、二者間売掛債権早期資金化の構造的リスク(客に取立てを委任することに伴うリスク)が「一般的に」買取率に影響しうるとしても、客「固有」の信用リスクを考慮していたとは認められないとして、かえって、債権の審査基準は専ら第三債務者に関する信用リスクのみを考慮されていたことが挙げられていることが特筆に値する。
②については、上記猶予はいつでも撤回することができ、実際に債権譲渡通知書の作成等の債権譲渡通知の準備がなされており、売掛債権早期資金化業者の判断において通知可能であったことから、その債権譲渡についての権利行使が制限されていたということもできない、と認定されている。そして、本判例の最も特筆すべき点として、平成18年最高裁判決(買戻特約付売買契約の形式を採りながら目的不動産の占有の移転を伴わない契約については、特段の事情がない限り債権担保の目的が推認される)との比較において、(債務者)対抗要件の具備の猶予が担保目的であることを推認する事情かどうかについて、裁判所は、「法があえて債権譲渡登記制度を設けて第三者対抗要件のみを具備することを可能としたことからすれば,債権の真正売買を前提としても,債権譲渡通知・承諾が猶予されて原債権者が債権の回収を行うことは想定されている」として、同事情が担保目的を推認しないと判断した。
③については、売掛債権早期資金化業者が「第三債務者の無資力のリスクを負っているにも関わらず,第三債務者に対する債権譲渡通知を留保する関係上,第三債務者に対する直接の信用調査が困難であることに照らすと,その差額は担保目的を推認させるような大幅なものということはできない。」として、概ね債権額面の7割から8割程度の売買代金を許容している。
3 講評
⑴ 本件は、公序良俗違反(貸金業法違反及び出資法違反)、貸金業法42条1項による契約無効、及び貸金業者として取引履歴開示義務といった「貸金業法違反」がメインに争われているが、その実質は、二者間売掛債権早期資金化が「債権譲渡担保付き金銭消費貸借契約」であるかどうについて、「担保目的の推認」という観点から判断されている判例です。
⑵ 上記観点①では、二者間売掛債権早期資金化の構造的リスク(顧客に取立てを委任することに伴うリスク)が「一般的に」買取率に影響しうるとしても、顧客「固有」の信用リスクを考慮していたとは認められないとされており、買取率については、顧客の個別の事情を考慮していなかったという点で、むしろ「一律」の方がよいという解釈もできます。
⑶ 上記観点②では、平成18年最高裁判決(買戻特約付売買契約の形式を採りながら目的不動産の占有の移転を伴わない契約については、特段の事情がない限り債権担保の目的が推認される)との比較がされており、その中で、法が「債権譲渡通知・承諾が猶予されて原債権者が債権の回収を行うことは想定」しているとして、二者間売掛債権早期資金化を明確に肯定しています。
⑷ 上記観点③では、債権額の7~8割程度の代金額が許容されています。この程度の買取率が、二者間売掛債権早期資金化の実務において定着したものと言えるでしょう。
平27(ワ)24861号 不当利得返還請求事件
1 事案
 本件は、客が売掛債権早期資金化業者に対し、二者間売掛債権早期資金化が①金銭消費貸借であるとして、利息制限法を適用して過払金の返還を、また、②公序良俗(暴利行為)又は譲渡禁止特約に反して無効であるとして、不当利得の返還を求めた事案である。
 客は、一審、二審、ともに敗訴し、最高裁へ上告までしたが、上告は棄却され、売掛債権早期資金化業者の勝訴判決が確定した。 2 争点に対する判断
⑴ 二者間売掛債権早期資金化は債権の売買たる実質を有し利息制限法が適用されるものではない
一審、二審、通して主として検討されたのは、債権回収の危険を客が負担していたかどうかであるところ、裁判所は、売買の目的である債権の記載と「代金額」の記載という売買契約の要件を満たした契約書と、これに基づく代金の支払いを前提に、㈠「代金額」が「契約日」から「支払日」までの期間の長短と対応していないこと、㈡債権の存在や内容の確認、第三債務者の与信調査が行われていたこと、㈢債権譲渡通知書が作成されて売掛債権早期資金化業者に交付されていたこと、を挙げて、本件の取引が売買契約の実質を有していると認定した。
 さらに、二審では、㈣債権譲渡通知がされていないこと(二者間売掛債権早期資金化であること)、㈤契約書上、客が表明保証などをしていることも争われたが、前者については、取引先である第三債務者に知られないように客から債権譲渡通知を行わないよう依頼があったこと、後者については、その表明保証は債権の実在性や債務不履行などに関するものであり、第三債務者の無資力ないし任意の不払いの危険を客に負担させたものではないと判断された。
⑵ 代金額が買取債権額の77~78%では暴利行為に当たらない
裁判所は、代金額が買取債権額の77~78%では暴利行為に当たらないと判断した。なお、二審では、客が第三債務者からの回収不能等の危険を負担しているものでなければ、売掛債権早期資金化業者が回収不能等の場合に客に対し償還を求める権利を有しているものではないとして、この代金額が「等価交換の理念に大幅に違反した暴利と認めることはできない」としている。さらに、契約日から債権の支払日までが短く、第三債務者に信用力があること、売掛債権早期資金化業者が客の窮状を認識していたといった事情は、本件の取引が売買契約であることを前提とすると、暴利行為として公序良俗に反することの根拠にできないとされている。
⑶ 二者間売掛債権早期資金化においても客は譲渡禁止特約による無効主張をする独自の利益を有しない
裁判所は、譲渡禁止特約による無効主張については、最高裁平成21年3月27日判決に従い、同特約に反して債権を譲渡した客にその無効主張をする独自の利益がないと判断した。なお、第三債務者に譲渡の無効を主張する意思があることがあるなどの特段の事情がある場合には、その独自の利益があることになるが、二者間売掛債権早期資金化では、第三債務者は客に対して支払えばよいのであるから、債権譲渡の無効を主張する必要性もない、と判断されている。
3 講評
⑴ 本件は、二者間売掛債権早期資金化でよく主張される、⑴金銭消費貸借であるから利息制限法を適用して過払金が発生している、⑵暴利行為であるから公序良俗に反する、⑶譲渡禁止特約に反して無効である、という典型的な争点について上級審まで争われた事案でしたが、上告が棄却され、一審、二審を通して認められた二者間売掛債権早期資金化の合法性が最高裁においても是認された結論にいたりました。
⑵ 上記争点⑴については、売買契約の要件事実(売買の目的と代金の定めがあること)論から入り、㈡第三債務者の与信調査といった、他の判例でも挙げられる事情に加え、㈠「代金額」が「契約日」から「支払日」までの期間の長短と対応していないことや、㈢債権譲渡通知書が作成されて売掛債権早期資金化業者に交付されていたことも挙げられていることは興味深いポイントです。前者については、「代金額」が「契約日」から「支払日」までの期間の長短と対応しているとなると、それは実質的に「利息」の計算をしていたことになり、後者については、債権譲渡通知書が作成されて売掛債権早期資金化業者に交付されていたことは、正に債権譲渡として三者間売掛債権早期資金化に移行する可能性があったことを評価しているものと思われます。
 さらに、控訴審では、㈣債権譲渡通知がされていないことについて、取引先である第三債務者に知られたくないという顧客のニーズとこれに伴う債権譲渡通知を行わないでほしいという顧客の依頼があったことを認定し、二者間売掛債権早期資金化の必要性が肯定されており、また、㈤契約書上、顧客が表明保証などをしていることについて、その表明保証が債権の実在性や債務不履行などに関するものに限定されていたことも見過ごせない点と言えるでしょう。 ⑶ 上記争点⑵については、二者間売掛債権早期資金化において、20%前後の手数料では違法ではないという実務が確立していると捉えることができます。
⑷ 上記争点⑶については、二者間売掛債権早期資金化においても最高裁平成21年3月27日判決を踏襲し、その射程が及ぶことについて、上告が棄却されて最高裁において是認されていることから、この点についての判例は確立した言えます。
平29(ワ)7263号・平29(ワ)21998号 供託金還付請求権確認請求事件
1 事案
 本件は、二者間売掛債権早期資金化において、売掛債権早期資金化業者、客の破産管財人、租税滞納で差し押さえた国、及び二重譲渡先が四つ巴で供託金について争った事案である。
2 争点に対する判断
⑴ 二者間売掛債権早期資金化は合法
 争点は多岐にわたるが、裁判所は、まず、二者間売掛債権早期資金化について、「実質的に金銭貸付けと同視し得るとまではいえず」、「公序良俗に違反し無効であるとは認められない。」として、合法の判断をしている(「債権譲渡において,債権の額面金額と債権の売買代金額が一致しないことは当然」とする売掛債権早期資金化業者の主張を認め、他方、破産管財人の「高利」であるという主張は、そもそも実質的に金銭の貸付けに当たらないことから排斥している。)。
⑵ 二者間売掛債権早期資金化の特徴を挙げて売掛債権早期資金化業者に譲渡禁止特約の有無につき「重過失」はなかったと判断
 次に、裁判所は、本件で二者間売掛債権早期資金化の対象となった債権には譲渡禁止特約が付されていたところ、「譲渡禁止の特約に反して債権を譲渡した債権者は,同特約の存在を理由に譲渡の無効を主張する独自の利益を有しないから,特段の事情がない限り,その無効を主張することは許されない」とする平成21年の最高裁判例に依拠し、「譲渡禁止の特約に反して債権を譲渡した債権者」である客にはその無効主張適格がないものの、差押債権者である国とこれに類似する法律上の地位にある破産管財人には「独自の利益を有する」としてその無効主張適格を肯定した。
 しかし、裁判所は、売掛債権早期資金化業者には譲渡禁止特約の有無について重過失はなかったとして、結論として国と破産管財人の主張を排斥している。ここで、裁判所は、二者間売掛債権早期資金化の特徴として、取引先に債権譲渡の事実を知られると信用の低下につながるため、取引先に知られずに債権譲渡による資金調達を行うことを目的としているのであるから、取引先に対し、譲渡禁止特約の有無を確認しなければならないとすると、契約の目的が達成できなくなるおそれがあることを理由の一つとして挙げている。
 なお、裁判所は、売掛債権早期資金化業者ではない二重譲渡先については、重過失を認めている。
⑶ 「平成28年10月1日から同年11月30日までの間に」という幅のある記載では譲渡対象債権が特定されていない
 本件で最も特筆すべきところは、譲渡対象債権の特定についての判断である。
 本件では、譲渡対象債権は、「平成28年10月1日から同年11月30日までの間に」客が第三債務者から支払を受ける○○債権の内金○○円という形で記載されており、10月支払分債権と11月支払分債権が含まれていた。
 裁判所は、このような記載では「譲渡対象債権が特定されているとはいい難い」として、「契約締結の時点では,当然には債権譲渡の効力は生じず,仮にその時点で譲渡通知が行われていたとしても,対抗要件を具備しないものと解すべき」とした上で、第三債務者から客に10月支払分債権について支払いがされ、客がこれを売掛債権早期資金化業者に支払っていないことから、11月支払分債権に事後的に特定されたと判断し、結論として、売掛債権早期資金化業者の供託金還付請求権を全面的に認めた。
3 講評
 二者間売掛債権早期資金化の合法性については、東京高等裁判所平成29年5月23日判決が積極的に判断しており、実務的にはこの評価が定着していること裏付ける判例です。
 譲渡禁止特約による債権譲渡の無効主張適格については、破産管財人につき下級審において判断が分かれており、本判例では積極的な判断がなされていますが、二者間売掛債権早期資金化の特徴を挙げて売掛債権早期資金化会社に「重過失」はなかったとは判断したことは重要な意義を有するものと考えます。
 他方、譲渡対象債権について「平成28年10月1日から同年11月30日までの間に」というような幅のある記載では、債権の特定性について消極に解されています(事後的に特定することはあるとの判断です)。
平30(ワ)32345号 不当利得返還請求事件
1 事案
 本件は、破産管財人が二者間売掛債権早期資金化を実質的に金銭消費貸借契約に当たるとして、利息制限法の適用又は類推適用により過払金の支払いを求めた事案である。
2 争点に対する判断
⑴ 二者間売掛債権早期資金化は実質的にも金銭消費貸借には当たらない
 主たる争点は、二者間売掛債権早期資金化が実質的に金銭消費貸借契約に当たり、利息制限法の適用又は類推適用を受けるかどうか、であるが、裁判所は、以下の3点を積極的な理由として挙げて、破産管財人の請求を棄却する判断を下した。
⑵ いわゆる「ノンリコース型」の契約書であったこと
 裁判所は、本件の売掛債権早期資金化業者の契約書の記載を指摘し、次のように判示している。
「債務者の不払による回収不能の危険は被告が負っていると認められるから,本件各取引は,借主が,債権の回収(弁済原資の調達)の可否にかかわらず借入額と同額について返還義務を負う金銭消費貸借とは性質が異なっており,債権譲渡であることを裏付けている」
 これは、売掛債権早期資金化業者が主張していた、いわゆる「ノンリコース型」(債務者による債務不履行があった場合でも,買主が売主に対して買戻請求その他の責任追及をできない構造)の売掛債権早期資金化取引であることを認めたものである。
⑶ 「二者間」の形式を採っていることは実質的に金銭消費貸借であったと認めるべき特段の事情に当たらないこと
 裁判所は、「二者間」売掛債権早期資金化、すなわち、第三債務者に対して債権譲渡通知をせず、客に債権回収業務を委託していることについて、次のように判示している。
 「債務者に対して債権譲渡通知をせず,アライバル及び近江機電が債権回収を行っていたことについては,取引先である債務者らに債権譲渡の事実が知られることによって,アライバル及び近江機電の経済的信用が低下することを防ぐための措置と解することができ,これをもって,本件各取引が実質的には金銭消費貸借であったと認めるべき特段の事情に当たるとはいえない。」
 これは、客において取引先に債権譲渡通知をされることなく資金調達をしたいという実務的なニーズがあることを認めたものと評価できる。
⑷ 債権の一部だけを買い取っていることは第三債務者の不払いのリスクを考慮してのものであること
 裁判所は、次のように判示して、債権の一部だけを買い取っていることを積極に理解している。
「本件各取引において,債務者の不払による回収不能の危険は被告が負っているところ,原告らが指摘する諸点のうち,被告が原告及びアライバルの有する債権の一部(一定の金額分)のみ買取対象としていたこと(甲9,弁論の全趣旨)は,むしろ,債権買取の可否を検討するに当たり,被告が上記危険を負担することが考慮された結果であると考えられ,そうであれば,譲渡代金額の決定に当たっても,上記危険が考慮要素になっていたことが推認される。」
3 講評
 二者間売掛債権早期資金化の合法性については、公序良俗に反するか、という段階と、利息制限法により過払請求が認められるか、という段階と、2段階に分かれるところ、ハードルの高い前者については認められた判例は皆無ですが、後者については、「金銭消費貸借に準ずる」としてこれを唯一認めた平成29年3月3日付けの大阪地裁の判例があります。しかし、同判例は、代金の一部しか渡していなかったという特殊事情があり、そのような特殊事情のない事案では、東京高等裁判所平成29年5月23日判決と同様に、「ノンリコース型」や「二者間」であることについて積極的に判断して後者についても合法であると判断される傾向があります。本判例もこの流れを踏襲しており、実務的に二者間売掛債権早期資金化が合法であるという評価が定着していること裏付ける判例と言えます。
 本判例で特筆すべきところは、債権の一部だけを買い取っていることを積極に理解している点です。これは、第三債務者の不払による回収不能の危険を売掛債権早期資金化業者が負っているという「ノンリコース型」の契約であることを前提とするものですが、「ノンリコース型」の契約かどうかについては、本判例では契約書の記載から判断されています。